傷だらけの令嬢〜逃げ出したら優しい人に助けられ、騎士様に守られています〜
29 真実③
来た時と同様に、グレッグ様と共に馬に乗る。
心なしか先程よりもグレッグ様の距離が近い。
片腕は後ろから抱きしめるように、私の身体をかっちりとホールドしている。
反対の手で手綱を握っている。
恥ずかしいのだけれど、それでももっと強く抱きしめてほしいと心の中で懇願する。
自分一人では正気を保っていられないほどに、心が蝕まれていた。
けれど、これ以上グレッグ様に甘える訳にはいかない。
もう……終わったんだ。
自由になったんだ。
だから……グレッグ様と会う口実もなくなる
もともと私なんかとは住む世界の違う人。
きっと最後だから…
せめて最後の思い出として、グレッグ様の温もりを刻みつけよう。
少し上体を起こして、密着している背後のグレッグ様に身を預ける。
そして、ゆっくりと馬に乗せていた両手を離した。
抱きしめるようにホールドしているグレッグ様の腕に、しがみつくように自分の手を添える。
「ソフィア、怖いか?急いですまない。私が支えている。落ちる心配はない。大丈夫だ。」
私はふるふると首を振る。
無意識に身体が小刻みに震えていた。
そんな私の身体を落ち着かせるように、グレッグ様は腕の力を強める。
振り落とされるのが怖いんじゃない
私が怖いのは、あなたとの関係性が変わってしまうこと
もう二度とこんな風に近づくこともできない
どさくさに紛れて、こうしてあなたに寄りかかるような浅ましい自分が嫌になる。
このまま永遠に帰りつかなければいいのに。
私の願いもむなしく馬は順調に駆けて進む。
街へ辿り着くと、馬は歩を緩める。
三日月亭付近に辿り着くとグレッグ様に抱え下ろしてもらう。
背中の温もりが消えて心許ない。
妙に肌寒く感じる。
「ソフィア、今日は何も考えずにもう休んだ方がいい。さぁ、早く中へ」
「…ありがとう…ございました」
消え入りそうになりながらも、グレッグ様へお礼を言い頭を下げる。
グレッグはそんなソフィアの頭を愛しむよう、よしよしと撫でる。
「っ!」
驚き上体を起こしながら戸惑うソフィア
「また連絡する」
グレッグ様は馬に跨り本舎へ戻って行った。
「気をつけて…」
その後ろ姿が見えなくなるまで、目に焼き付けるように見送っていた。
そろそろ戻ろうと踵を返して、三日月亭の入口に手をかけようとした時だった。
「すみません、お嬢さん、少しだけ手を貸していただけませんか?」
女性に声をかけられて振り向く。
フード付きの黒っぽいマントを身に纏った女性だった。
頭からすっぽりと目深くフードを被っているので顔はみえない。
その格好から不審に思い警戒したけれど、
女性のようだし切羽詰まった様子が窺えたので、とりあえず話を聞いてみることにした。
「どうされたのですか?」
「友人が立ちくらみを起こして…すぐそこです。私では抱えることができなくて…手伝っていただけませんか」
「えぇっ大丈夫ですか?どこですか」
「あぁ、お優しいかた、ありがとうございます。こちらです、早く」
急かされるように女性に誘導されて進む。
ふと、どこか聞き覚えのある声のような気がした
「さぁ、こちらです」
陽も傾き出していて辺りは薄暗くなりつつある。
通りを奥に入ると裏路地と呼ばれる所がある。
裏路地には近づかないようにルイーザさん達に言われている。
表通りと違いあまり治安が良くないのかもしれない。
けれど女性は裏路地へと進んで行く。
「さぁ、こちらです。もうすぐですので」
どうしよう…
躊躇して足が竦む
けれど命に関わる病気かもしれない
自分のせいでその方が助からなかったらと思うと、助けなければという使命感が湧いてくる。
意を決して女性に続いて裏路地へと足を踏み入れた。
表通りと違い、地面は整備されていなく、建物の損壊、窓が割れているのが目につく。
全くと言っていいほど人の気配がしない。
街灯も壊れている。
一刻も早くここからその方を連れ出さなければ。
「あそこです」
女性の指し示す方向に蹲る人影が見えた。
暗がりのためよく見えない
急いでその人影に駆け寄った。
「大丈夫ですか?私の肩に掴まれますか?一緒に━━っ!」
ガツンと首の後ろに衝撃が走った
何が起こったのか分からないままぷつりと意識が途絶えていた。
心なしか先程よりもグレッグ様の距離が近い。
片腕は後ろから抱きしめるように、私の身体をかっちりとホールドしている。
反対の手で手綱を握っている。
恥ずかしいのだけれど、それでももっと強く抱きしめてほしいと心の中で懇願する。
自分一人では正気を保っていられないほどに、心が蝕まれていた。
けれど、これ以上グレッグ様に甘える訳にはいかない。
もう……終わったんだ。
自由になったんだ。
だから……グレッグ様と会う口実もなくなる
もともと私なんかとは住む世界の違う人。
きっと最後だから…
せめて最後の思い出として、グレッグ様の温もりを刻みつけよう。
少し上体を起こして、密着している背後のグレッグ様に身を預ける。
そして、ゆっくりと馬に乗せていた両手を離した。
抱きしめるようにホールドしているグレッグ様の腕に、しがみつくように自分の手を添える。
「ソフィア、怖いか?急いですまない。私が支えている。落ちる心配はない。大丈夫だ。」
私はふるふると首を振る。
無意識に身体が小刻みに震えていた。
そんな私の身体を落ち着かせるように、グレッグ様は腕の力を強める。
振り落とされるのが怖いんじゃない
私が怖いのは、あなたとの関係性が変わってしまうこと
もう二度とこんな風に近づくこともできない
どさくさに紛れて、こうしてあなたに寄りかかるような浅ましい自分が嫌になる。
このまま永遠に帰りつかなければいいのに。
私の願いもむなしく馬は順調に駆けて進む。
街へ辿り着くと、馬は歩を緩める。
三日月亭付近に辿り着くとグレッグ様に抱え下ろしてもらう。
背中の温もりが消えて心許ない。
妙に肌寒く感じる。
「ソフィア、今日は何も考えずにもう休んだ方がいい。さぁ、早く中へ」
「…ありがとう…ございました」
消え入りそうになりながらも、グレッグ様へお礼を言い頭を下げる。
グレッグはそんなソフィアの頭を愛しむよう、よしよしと撫でる。
「っ!」
驚き上体を起こしながら戸惑うソフィア
「また連絡する」
グレッグ様は馬に跨り本舎へ戻って行った。
「気をつけて…」
その後ろ姿が見えなくなるまで、目に焼き付けるように見送っていた。
そろそろ戻ろうと踵を返して、三日月亭の入口に手をかけようとした時だった。
「すみません、お嬢さん、少しだけ手を貸していただけませんか?」
女性に声をかけられて振り向く。
フード付きの黒っぽいマントを身に纏った女性だった。
頭からすっぽりと目深くフードを被っているので顔はみえない。
その格好から不審に思い警戒したけれど、
女性のようだし切羽詰まった様子が窺えたので、とりあえず話を聞いてみることにした。
「どうされたのですか?」
「友人が立ちくらみを起こして…すぐそこです。私では抱えることができなくて…手伝っていただけませんか」
「えぇっ大丈夫ですか?どこですか」
「あぁ、お優しいかた、ありがとうございます。こちらです、早く」
急かされるように女性に誘導されて進む。
ふと、どこか聞き覚えのある声のような気がした
「さぁ、こちらです」
陽も傾き出していて辺りは薄暗くなりつつある。
通りを奥に入ると裏路地と呼ばれる所がある。
裏路地には近づかないようにルイーザさん達に言われている。
表通りと違いあまり治安が良くないのかもしれない。
けれど女性は裏路地へと進んで行く。
「さぁ、こちらです。もうすぐですので」
どうしよう…
躊躇して足が竦む
けれど命に関わる病気かもしれない
自分のせいでその方が助からなかったらと思うと、助けなければという使命感が湧いてくる。
意を決して女性に続いて裏路地へと足を踏み入れた。
表通りと違い、地面は整備されていなく、建物の損壊、窓が割れているのが目につく。
全くと言っていいほど人の気配がしない。
街灯も壊れている。
一刻も早くここからその方を連れ出さなければ。
「あそこです」
女性の指し示す方向に蹲る人影が見えた。
暗がりのためよく見えない
急いでその人影に駆け寄った。
「大丈夫ですか?私の肩に掴まれますか?一緒に━━っ!」
ガツンと首の後ろに衝撃が走った
何が起こったのか分からないままぷつりと意識が途絶えていた。