傷だらけの令嬢〜逃げ出したら優しい人に助けられ、騎士様に守られています〜
第二部
プロローグ
✳︎✳︎✳︎
とある馬車の中、元貴族の女性が修道院へと送られていた。
貴族向けのその修道院は、戒律が厳しいと有名で、そこに送られるということは一生出ることは出来ないことを意味する。
通常の修道院とは違い、何らかの罪を犯した貴族の女性が送られる所だ。
もちろん、殺人などを犯した凶悪犯罪者はいない。
そういった者は、例え貴族であってもきちんと裁かれる。
軽犯罪を犯した者で、強制労働所送りの次に重い処罰を言い渡された者がおくられる場所だ。
一生そこからは出ることは許されない
亡き骸は焼却されて集団埋葬される。
元貴族達にとっては屈辱的なこと。
己の犯した罪を省みる場所。
名目上修道院ではあるけれど、事実上そこは収監施設だった。
そこへ向かう馬車の中で、手足を拘束された女性は虚空を見つめていた。
監視役として男が一人向かい側に座っている
通常こういう場合は、馬車内に修道院の職員の女性が騎士と共に同行するか、女性騎士が監視役につく
けれどなぜか急遽変更となり、騎士ではなくその男が同行となっていた。
「何を見ている」
「…」
男は女性に問いかけるも返答はない
「何か言いたそうな顔をしているぞ。話なら聞けるが」
「……うるさいわね…もう、どうでもいいわ」
「何がどうでもいいんだ?」
「はぁ⁉︎ うるさいって言っているでし
ょ! 私に話しかけないで!
本来ならあなたごときがこの私と同じ
空間にいることさえおこがましいわ」
「ははは、随分とお高くとまっているのだ
な。私が逃してやるといってもそういう態
度をとれるのか?」
「ふんっ、出来もしないことを言ってふざ
けるのも大概にして。
それに、いったい私を逃してあなたに何
の得があるの?」
「得か…ある目的のためにお前を利用した
いと言ったら?」
「目的?まぁ、どうでもいいけど、冗談
なら他の人に言いなさい。もう話しかけな
いで」
「…ソフィアという娘を知っているか?」
「やめて!二度と聞きたくない名前だわ。
あの女のせいで‼︎」
女性は両腕で自分自身を抱きしめるようにさすった後、自身の親指の爪を噛む。
「あぁ!気持ち悪い!
まだ触られた感触が残ってる!
あの女のせいで‼︎許せない!」
「ははは、随分と恨んでいるのだな、アン
ジェリカ」
「はぁ!?誰が名前を呼ぶ許可をしたの!」
「いいのか、そんな態度をとって?
もうすぐ急カーブにさしかかる。そこでこ
の馬車をそこから落とすつもりだ。
選んでいいぞ。一緒に馬車と心中するか、
私の目的のために働くか……
ついでにソフィアという娘への復讐も
できるかもしれないが…どうする?」
「ふんっ、そんなの考えるまでもない
わ。あの女に復讐できるならなんだってい
いわ。この私が協力するっていうんだか
ら、光栄に思いなさい」
「来い」
男は拘束具を素早く解除して、アンジェリカに手を差し伸べる
アンジェリカは、迷うことなく差し出された男の手をとった。
「ソフィア!許さない!」
✳︎✳︎✳︎
とある馬車の中、元貴族の女性が修道院へと送られていた。
貴族向けのその修道院は、戒律が厳しいと有名で、そこに送られるということは一生出ることは出来ないことを意味する。
通常の修道院とは違い、何らかの罪を犯した貴族の女性が送られる所だ。
もちろん、殺人などを犯した凶悪犯罪者はいない。
そういった者は、例え貴族であってもきちんと裁かれる。
軽犯罪を犯した者で、強制労働所送りの次に重い処罰を言い渡された者がおくられる場所だ。
一生そこからは出ることは許されない
亡き骸は焼却されて集団埋葬される。
元貴族達にとっては屈辱的なこと。
己の犯した罪を省みる場所。
名目上修道院ではあるけれど、事実上そこは収監施設だった。
そこへ向かう馬車の中で、手足を拘束された女性は虚空を見つめていた。
監視役として男が一人向かい側に座っている
通常こういう場合は、馬車内に修道院の職員の女性が騎士と共に同行するか、女性騎士が監視役につく
けれどなぜか急遽変更となり、騎士ではなくその男が同行となっていた。
「何を見ている」
「…」
男は女性に問いかけるも返答はない
「何か言いたそうな顔をしているぞ。話なら聞けるが」
「……うるさいわね…もう、どうでもいいわ」
「何がどうでもいいんだ?」
「はぁ⁉︎ うるさいって言っているでし
ょ! 私に話しかけないで!
本来ならあなたごときがこの私と同じ
空間にいることさえおこがましいわ」
「ははは、随分とお高くとまっているのだ
な。私が逃してやるといってもそういう態
度をとれるのか?」
「ふんっ、出来もしないことを言ってふざ
けるのも大概にして。
それに、いったい私を逃してあなたに何
の得があるの?」
「得か…ある目的のためにお前を利用した
いと言ったら?」
「目的?まぁ、どうでもいいけど、冗談
なら他の人に言いなさい。もう話しかけな
いで」
「…ソフィアという娘を知っているか?」
「やめて!二度と聞きたくない名前だわ。
あの女のせいで‼︎」
女性は両腕で自分自身を抱きしめるようにさすった後、自身の親指の爪を噛む。
「あぁ!気持ち悪い!
まだ触られた感触が残ってる!
あの女のせいで‼︎許せない!」
「ははは、随分と恨んでいるのだな、アン
ジェリカ」
「はぁ!?誰が名前を呼ぶ許可をしたの!」
「いいのか、そんな態度をとって?
もうすぐ急カーブにさしかかる。そこでこ
の馬車をそこから落とすつもりだ。
選んでいいぞ。一緒に馬車と心中するか、
私の目的のために働くか……
ついでにソフィアという娘への復讐も
できるかもしれないが…どうする?」
「ふんっ、そんなの考えるまでもない
わ。あの女に復讐できるならなんだってい
いわ。この私が協力するっていうんだか
ら、光栄に思いなさい」
「来い」
男は拘束具を素早く解除して、アンジェリカに手を差し伸べる
アンジェリカは、迷うことなく差し出された男の手をとった。
「ソフィア!許さない!」
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