傷だらけの令嬢〜逃げ出したら優しい人に助けられ、騎士様に守られています〜
乗り合い馬車から降りて、ソフィアとジャックは三日月亭へと辿り着いた。

三日月亭の前に誰かが佇んでいるのが目に入る

「誰かしら」

休業のことは常連の方達には随分前からお知らせしていたし、貼り紙もして告知している。

不思議に思いつつもソフィアが近づこうとするのを、ジャックが呼び止めた


「ソフィア、念の為、僕の後にいて、用件を聞いてくるから」

「ソフィアちゃん!あー良かった、帰ってきて…帰って来なかったらどうしようかと心配してたっす」

「キースさん?キースさんじゃないですか、どうされたのですか?騎士服姿じゃないから一瞬分かりませんでした」

キースは気さくに話しかけながら二人の側に近づいてきた

「あ、今は(通常の)仕事中ではないんで。ところで、こちらの人は…」

「こちらは、ジャックです。とてもお世話になった人で、家族のような人です」

にこにこと笑顔で話すソフィアに対して二人は反応に困っていた

「ソフィア、そう言ってもらえるのは嬉しいが…ソフィアの知り合いかい?」

「…家族…あっお兄さんとかですか?」


「「違います」」

ソフィアとジャックは同時に返答したので、顔を見合わせて笑い合う

その様子を見たキースは、先輩がこの様子を見たならば大変なことになると焦っていた

先輩を傷つけたくはない

キースにとってグレッグは、憧れの存在だった

その先輩の婚約者が、こんな突然現れたような人に横取りされるなんて、受け入れられない

隊長の言うように本当はこの二人が付き合っていて、先輩が横入りしたのかもしれないけど…

まぁ確かに、背も高いし、認めたくないけど、かっこいい…いやっ先輩に比べたら全然

それに、なんだ、この気心の知れた感じ

家族のような関係って、自分には理解がむずいっす

「あのさ、ソフィアちゃん三日月亭ってしばらく休みなの?」

「えぇ、ダンさん達が旅行に行っている間だけですけど、キースさんもしかして食堂をご利用したかったのでしょうか?」

「えっ、旅行?先輩はそのこと知ってます?」

「いいえ、言いそびれてしまって。
それに余計な心配かけたくないですし…

ジャック、こちらはキースさんと言って、私を助けてくれた騎士様の同僚のかたです」

ソフィアはジャックにキースのことを紹介すると、入口の扉を開ける

「キースさんもどうぞ。せっかくなので中でお話ししませんか」

「え、いいんすか?」

「ソフィアがいいと言っているので、僕は異存はありません」

「じゃ、お邪魔しまーす」
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