傷だらけの令嬢〜逃げ出したら優しい人に助けられ、騎士様に守られています〜
「どうぞ、お好きな席におかけください。紅茶を淹れてきますね」

ソフィアは食堂へ二人を案内した後、キッチンへと向かった。

必然的に二人きりになったキースとジャックは、向かい合わせに腰掛けた



「キースさん、ソフィアと仲良くしていただいてありがとうございます。」

「いや、別にあなたにお礼を言われることでなないっす…ジャックさんはこの辺りに住んでいるんすか?」


「いいえ、気になりますか?
実は今日こちらの三日月亭が休みだということを知らなくてですね、ソフィアが泊めてくれるというので、お言葉に甘えようかと」

落ち着いた様子で話すジャックに、キースはイライラしていた。

じっと見据えてくる眼差しが自分を挑発しているように感じられる

「はぁ⁉︎ちょっと、非常識じゃないんすか」

「非常識?そういうキースさんも、何かの思惑があってソフィアを訪ねてきたのでは?」

「ちょっと、ジャックさん、いいですか、一つ大事なことをこれから言いますから、よく聞いてほしいっす。

あのですね、ソフィアちゃんは、先輩の婚約者なんですからね!」

キースはいてもたってもいられず、ソフィアがグレッグの婚約者であることを強調する


それまで余裕の表情だったジャックは目を見張った

「婚約者…?ソフィアが婚約しているのですか?誰と?」


「だから、グレッグ先輩とです!
先輩のこと見たら腰を抜かしますよ、先輩は超絶かっこいいんですからね」

「そうですか…予想外だったが…
ソフィアに確認するとします。

それにしても、そんなにかっこいいと言い張るのなら、何をそんなにムキになっているのですか?

僕の存在が気になりますか」

(あ~、この人、なんか気に入らないっす、先輩、必ず俺がソフィアちゃんを守りますからね)

キースは固く心に誓った

「ごめんなさい、お待たせしました。二人で何を話していたのですか?」

ソフィアはトレイに料理を乗せて戻ってきた。

「簡単なものしかできなくて、お口にあうといいのですが」

「ソフィア、運ぶの手伝うよ」

「俺までご馳走になって申し訳ないっす」

テーブルの上に野菜炒めと、スープ、パン、フルーツと紅茶を並べると、皆で食事の席につく。

最初はぎこちない感じだったけれど、それなりに和やかに食事が進んでいった

ソフィアの左手に光る指輪に気づいたジャックが問いかけると、恥ずかしそうにソフィアはグレッグのことを話す

キースはその様子を見て、やはり隊長の勘違いだと思い安心する


ジャックは、ソフィアを助けてくれたお礼を言いたいから、グレッグと会わせてほしいと頼んでいた


成り行きとは恐ろしいもので、あろうことかキースまで泊めてもらうことになってしまった


キースはソフィアちゃんにご飯もご馳走になり、しかも泊めてもらったと知られたら殺されてしまうと危惧していた


このことは墓場まで持っていく秘密にしようと思った。



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