傷だらけの令嬢〜逃げ出したら優しい人に助けられ、騎士様に守られています〜

6 アンジェリカside

✳︎✳︎✳︎
男の手引きにより、どこかの邸にアンジェリカは連れて来られていた

大きな邸だが、見える範囲に紋章は見当たらない

ちょっとした成金の邸か、もしくは貴族の別邸のうちの一つといったところだろうとアンジェリカは想像する

紋章を敢えて隠しているのだとしたら、愛人を囲っている家か、もしくは何か公にできない商売や会合に使用しているのかもしれない

現に今こうして自分が足を踏み入れている時点で、普通の家ではないことが証明されている。


「それで?この私に何をさせたいの」

邸内の応接室のソファーにドサリと腰をおろすと、アンジェリカは男に問いかける

年齢は40代くらいだろうか、それとも50代

見たことがある気もしなくはないけれど…

どこかの施設の職員のような服装を身に纏っているが、妙に偉そうな態度といい、この私のことを呼び捨てにしていたことといい、貴族なのだろう


それなりに貴族の顔と名前は認識しているけれど、年寄りには興味ないわ


おじさんじゃない

まぁ、それでも辛気臭い修道院に行かずにすんだのだから、ちょっとぐらいなら媚びを売っておこうかしら

「なに、お前にとっては簡単なことだろう。
ソフィアという娘と、一緒にいるはずの男を連れて来てほしい
なーに、ちょっとした話がしたくてね、

話というか実験というか…ククク…」


男は何が可笑しいのか、声を押し殺して笑っている

「はぁ?そんなの自分が連れてくればいいじゃない、私を連れだすよりよっぽど簡単だと思うけど?」





「私を見るとあの男は逃げるかもしれない。少しばかり強硬手段にでようとおもってね。」

男は棚の中に綺麗に置かれているボトルを目で追うと、その中の一つのボトルを手に取った。

グラスに氷をいれ、ボトルの中の液体を注ぐ

「酒は飲めるのか?景気付けに1杯どうだ」


「今はそんな気分じゃないわ、
 ふ~ん…誘拐してでも連れて来たいということね。
 ソフィアと一緒にいる男って? 
まさかあの女に恋人でもできたというんじゃないでしょうね、アハハハ! まさかね、そんな物好きがいるわけないわ」

アンジェリカは腹を抱えて笑い転げる

「まぁ男のことは追々とな。なーに、お前一人に任せようって言うんじゃない。金を積めば何でもやってくれそうな者達を集めているさ、好きにお前の手足となって働いてくれるだろう、

お前は連れて来たあとに、ソフィアを好きに痛ぶるといい

ククク、あの男がどうするか…」

「人に指図されるのは好きじゃないけれど、楽しそうね。
いい気になっているあの女には躾が必要。誰かが教えてあげないとね」

「さっそく仕事に取りかかってもらおう、お前にとっては馴染みのある場所、ノーマン邸に連れてこい。夜は誰もいないあそこなら、仕事もしやすい、話は通してある。
それとも、感傷に浸ってしまいそうか?」

「はぁ⁉︎私を誰だと思ってるの、そんなやわな精神は持ち合わせてないわ、
それにしても、あなた何者…まぁ、聞かないことにする」

アンジェリカは立ち上がると、足取りも軽く教えられた部屋に向かう。


意気揚々と扉を開けるも、目に飛び込んできた人物達の雰囲気に息を呑む

あの時のことが思い出されて吐き気がした


自分を襲ったのはこいつらではない

こんな仕事を引き受けるくらいだから、クズには変わりないけれど。

アンジェリカは、この者達を無性に殴りたい衝動をぐっと堪えた


さっさと立ち去るべく、ソフィアの容姿を伝える。

馬鹿ばかりだわ

一度で覚えなさいよ!

何度目かの説明をした後、最後にあの男から預かったメモを渡した

ソフィアの居場所を記しているメモだ


「それにしても、こんなに大人数で行く必要はないんじゃないの?半分は先に邸へ向かうわよ、ぐずぐずしないで!」

「「へい」」

ソフィア、邸で待っているわよ


今に思い知らせてやるわ

それまでせいぜい足掻くといいわ!


過度の興奮からゾクゾクする気持ちに酔いしれる

あなたの顔がどんなふうに歪むのか、想像するだけでも楽しいわ

早く来なさいソフィア!

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