傷だらけの令嬢〜逃げ出したら優しい人に助けられ、騎士様に守られています〜
ジャックは男に連れられて、とある部屋へと案内された

この広い室内の家具もほとんど撤去されていた

子供の頃の記憶はあやふやで、ここが何の部屋かも思い出せない  


家具がないだけで、こんなにも印象が違って見える


「……いったい、僕に何のお話でしょうか? あの件についてはお断りさせていただいたはずですが……」


「何が望みだ? 金なら言い値を払うと伝えたではないか。

それとも地位が欲しいのか?
私の専属の技術者として、代々的に宣伝してやろう。

お前の腕と私の力があれば、多くの者がひれ伏すだろうよ

ククク、どうだ? あんなちっぽけな施設などではなく、私の元で働く方がお前のためにもなる」

「……やはりそのお話ですか。

そんな話をするためにあんな手荒な真似をしたというのですか?

なんでソフィアも連れてきたのですか‼︎

彼女は関係ないのに!

 それに僕のためとおっしゃいますが、お言葉を返すようですが、僕はそんなこと望んでいません。

あなたがどう思われようとも、僕はこの技術を大々的に公表するつもりもありません!

そのお話だけでしたら、これで失礼します。

それと……ソフィアのことを巻き込むのだけはやめてください。

今回のことも、通報したりしませんので、お互いに何もなかったことにしましょう。」


ジャックは言いたいことだけを言って、立ち去ろうとした

「お前の大事なソフィアがどうなっても構わないのか?

今頃は、アンジェリカがさぞかし可愛がっているだろう

ククク……  
お前が助けたいと言っていたソフィアが、


お前のせいでアンジェリカに痛めつけられるのだ。

あのソフィアとかいう娘も、さぞかしつらいだろうな

せっかく解放されたと思ったのに、お前のせいでアンジェリカの側に戻ることになるのだから。

お前のことも恨むだろうな。

だが、ここでお前が私の元に来ると言えば、すぐにでもソフィアを解放してやろう。

あぁ、まずは自分の目で見てからだな。

きっと、ソフィアの痛ましい姿を見れば、お前の考えも変わるだろう

さ~て、アンジェリカに痛ぶられる姿を一緒に見物しようか」

「ソフィアに何をしたのですか!

あいつ…いや 、アンジェリカお嬢様は捕まったはずでは⁉︎

デクスター様、あなたはいったい何がしたいのですか!

仮にも公爵家の方がすることとは思え
ません!」

ジャックはソフィアの状況を聞いてデクスターに詰め寄り詰問する


「知ったような口を叩くな。

お前ごときに何が分かる‼︎

私はな、仮にもこの国の宰相を務めていたのだぞ!」

デクスターはジャックの肩を小突きながら
ジャックを壁際まで押しやる

後ろに倒れそうになるのを踏ん張りながらも、ジャックは疑問を口にする

「だからこそ、どうしてこのようなことを……」

「うるさい! 私はな、この国を見返してやるんだ!

この私から宰相の座を奪った者共に、思い知らせてやりたいんだよ


今にこの私を蔑ろにしたことを後悔するだろうよ、

この国には魔法使いもいない

魔道具さえない

魔石でさえ簡単に入手できない

魔法があればどんなに素晴らしいかお前も分かるだろう? 

魔法の力があれば、もはやこの国を支配することも可能だ」

「あれは、そんな大それたことをすることはできない! 僕はけがした人を助けるための治癒の方法を発見したにすぎない。」

「ククククク! 治癒……ね。素晴らしかった。

施設長から初めてその話を聞いた時は度肝を抜かれたよ

実際目の当たりにした時はさらにね。

てっきり高額な魔石を手に入れたのかと思えば、ただ同然のクズ石を寄せ集めていると聞いた時は目から鱗だったな。

お前に断られた後、すぐに私も異国からクズ石を取り寄せてみた

色々な者達にその加工を依頼したが、誰も成功しなかった。

魔石を加工する際にでる、本来なら捨てられる粉にも見えるようなくず石だ。
魔石としての効力はないと言われたしな……

効力があるのならば、こんなに簡単に入手できないだろうよ。

だからこそ、お前の腕が必要なのだ!

何かお前には特別な力があるのだろう?

治癒以外に攻撃に使えるものも作れるのだろう?

私はその力が欲しい! お前は私の僕となるのだ!」


デクスターは壁際に追い詰めたジャックの襟元を掴み上げる

「お前は一生、私から逃れられない!
お前の返答次第によっては、ソフィアを私のものにする‼︎ たっぶりとかわいがってやろうではないか。 

あぁ、お前を救うためだと言えば、喜んで身を差し出すかもしれないな…

直接ソフィアに持ちかけてみるとしよう

ククク、私は別に構わないが?」

目をぎらつかせデクスターはジャックを威圧する。鬼気迫る勢いに気押されてジャックは黙って睨み返すことしかできないでいた
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