傷だらけの令嬢〜逃げ出したら優しい人に助けられ、騎士様に守られています〜

エピローグ

✳︎✳︎✳︎

囚われてノーマン邸で一夜を過ごし、
全てから解放された時には、空が茜色に染まる頃だった


アレクセイ様とリリアーナ様とは、早急にお別れの挨拶をした

何度もリリアーナ様によって一緒に連れて行かれそうになったけれど、グレッグ様が断ってくれた

近日に必ず会いましょうと声をかけてくださったのが嬉しい


ジャックは一人で帰路についた

何度も謝罪されたけれど、ジャックのせいではないのに……


ジャックには改めて、今度グレッグ様と三人で会いたいと思う


グレッグ様と共に、ノーマン邸から馬車で街まで戻ってくることができて、見慣れた街並みを見てほっとする


「ソフィア、三日月亭までもう少しだ。

少しだけこのベンチで待っていてもらえるか? すぐに戻る」

声を出す気力がなく、黙ってコクリと頷いた



あたりの店は、ちらほらと閉店の札を掲げつつあった。


グレッグはソフィアの安全確認を怠らず、常に周辺を警戒しながら、早急に近くの店に飛び込んだ

「ちょっと尋ねるが、この店に今薔薇の花は何本ある?」

「いらっしゃいませ、贈り物にご利用でしょうか? 何本の希望ですか?」


「今何本あるだろうか? できれば
999本お願いしたい」

「えぇっ⁉︎ そ、その本数はないかと思います」

「ここに出ているだけなのか?

パッと見たところ282本といったところか……


珍しいな、青い薔薇があるのか」



「はい、こちらの花言葉は夢叶う・奇跡などです。プレゼントにもおすすめですね」

グレッグはざっと青い薔薇の本数を目視で確認する

「ならば、101本お願いする。早急にだ。釣りはいらない」

「ひゃく……しょ、少々お待ちください」

心なしか慌てふためく店員から、花束を受け取り店を後にする

ソフィアには、やはり赤よりも青いものを手渡したい

自分の瞳を思わせる青いもので……


グレッグは購入した花束を持って、ソフィアのもとへと戻って行く


噴水の傍のベンチに腰掛けたソフィアは、グレッグが戻るのを待っていた

今日は色々なことがあり、心身共に疲弊していた
そのせいもあって、自然と足元を見るように俯いていた


「ソフィア」


ふと頭上から優しく呼びかけられたかと思うと、グレッグが片膝をついてソフィアの目線を捉える


「…グレッグ様? 地面ではなくどうか隣に座られてください」

ソフィアは慌ててグレッグを立ち上がらせようと手を差しのべると、

グレッグはその手を取るものの、依然立ち上がらない

「ソフィア、今日は辛い一日だったと思う

最悪な気分のまま、ソフィアを帰したくはない

少しは気分が晴れるといいのだが……


これを、ソフィアに」


ソフィアの手を放すと、片膝をついた状態で、両手で花束を持ち上げるように差し出す


「きれい……こんなに沢山の素敵な花を頂いていいのですか?
ありがとう……ございます……グレッグ様。

青いバラを見たのは初めてかもしれません。

とても、きれいですね」

「あぁ」


グレッグを見下ろす体勢となっているソフィアは、ベンチから滑り落ちるようにグレッグに抱きついていた



「…ソフィア……本当は999本渡したかった……私の気持ちを込めたつもりだ


ソフィア、愛してる」


「きゃっ、グレッグ様」

グレッグはソフィアに抱きつかれたまま、持ち上げるように立ち上がり、柔和な笑みを浮かべる


そして地面にゆっくりと降ろす

その瞬間
パチパチパチパチと周囲から拍手が沸き起こる


「グレッグ様、み、みんなに見られています」


恥ずかしさのあまり顔全体が真っ赤に染まる


あのような体勢で、花束を渡していたので、プロポーズが成功したと思われているのかもしれない


「ソフィア、今日あったことは少しは忘れられそうか?」

「………こ、こんなに嬉しいことは、きっと一生忘れられません!」

嬉し涙が溢れそうなソフィアの目元に、グレッグがちゅっと口づけを落とす

「ソフィアの涙も私だけのものだ」

「グレッグ様、何を…言って…」

顔を逸らそうとしたところを、そうさせまいとグレッグの両手が頬に添えられる

「ソフィア…」


いつも穏やかなグレッグ様の瞳が、荒々しい熱情の炎に揺れている

周囲の目など気にならないくらいに、

その瞳に囚われて

ソフィアはそっと瞼を閉じた


柔らかな感触が唇に触れる

唇が離れたかと思うと強く抱きしめられた



「ソフィア、今日は…
泊まってもいいだろうか。 ソフィアを一人にしたくない」

耳元で囁くように声をかけるグレッグに、

ソフィアは黙ってコクリと頷いた

ほんの少しだけど、グレッグ様はずるいと思ってしまう

そんなことを言われて、断れる訳なんてないのに

でも、どんな時でも私の気持ちを慮ってくれる優しい人



「三日月亭に帰ろう、ソフィア」


祝福の拍手の音に包まれて、
グレッグ様に肩を抱かれて三日月亭へと歩きだす


「ソフィア、

101本の薔薇の意味を知っているだろうか?

101本の薔薇の意味は━━━」



真摯な姿勢で、真っ直ぐな好意をストレートな言葉で伝えられて、

身体中が朱色に染まる



「グ、グレッグ様、私も━━━」

グレッグ様と同じ想いを抱いていることを、

私も言葉で紡ぎ出す



とても恥ずかしいけれど、

想いは口に出さないと伝わらないこともあるから


きっと私は、


グレッグ様に、この先何度も同じ言葉を伝えると思う

これからも、お互いの想いを確かめあうように 



~第二部 fin~




ここまでお付き合いいただきまして、
本当にありがとうございます!

101本の薔薇の意味は書こうか悩みましたが……
ご興味ありましたら番外編をご覧いただけますと幸いですm(_ _)m



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