ドラマチックに社内恋愛

秘密

秘密


早苗は、外から見ると、イケメンの直人に首ったけのようであった。直人は、最近の若者の歌ばかり歌っていた。すると直人が早苗に寄り添うように肩に手をかざしてきた。拓也は目を丸くして眺めていた。この後、拓也には信じられない行動を直人は。早苗のブラウスから谷間の見えるブラジャーの中へと手を差し入れてきたのだ。すると直人は
「藤原さんも」
拓也は次の言葉を失い呆気に取られた。それ以上の出来事は起こらなかった。これは、若いから?イケメンだから、出来るのであろうか????カラオケボックスを後にして部屋に戻ると、LINEに早苗からメッセージが届いていた。
「今日は、ありがとう。楽しかったです。でも、直人君とは付き合ってもいないからね。
誤解しないでね おやすみ」
「おはよう」
朝起きて早苗にLINえするのが日常的になっていた。
バレンタインからあっという間に梅雨の季節になっていた。戸畑区にあるとばた菖蒲祭り。拓也は、三ヶ月目にして仕事に余裕もでき早苗と初デートの約束にこぎつけた。拓也と早苗は屋根の付いた休憩所に二人座った。
話題は会社の話であった。拓也は、LINEでは、ズバッと言えたり話せるのに、直接会って話すと、ネタが浮かばないでいた。別れ際に今度は、8月の花火大会に行こうって。今日は、休憩所で会話して、ちょっと1時間ぐらい散歩して菖蒲を見て写真を撮ったデートだった。
「こんばんわ、今日は、楽しかったわ」
拓也は、LINEで、思い切って早苗に問いてみた。
「恋人になってくれない」
「そんな気ないわよ、友達でしょ」
「私を落としてみせる」
「おやすみ」
拓也は友達から恋人への昇格に頭を悩ませていた。
恋人ってなんだろう。理解するのはむづかしいが、なんとなく理解出来る。
花火大会。
この日は早苗も、23時まで付き合いますと言っている。
拓也は勝負に出ようと企んだ。
財布の中には、ちょっと心細いが二万円が入っていた。
恋愛の参考書がないマニュアルがない。
当日。
待ち合わせ場所に朝から。
新日本三大夜景に選ばれ北九州だけでなく日本を代表する皿倉山。ケーブルカーもあり山頂まで簡単に登れます。夜景はもちろん日中もピクニック気分で楽しめますよ。参道は手をつなぐチャンス!
「拓也さん何汗かいてるの」
拓也は、隙がないか伺ってるが、そんな気配はやって来ない。
「あの〜手を繋ぎませんか」
「いいわよ」
拓也は全身の力が抜けた。まさか
「あの〜キスして」
いいですかとは、言えなかった。拓也は皿倉山から下関の関門海峡花火大会まで車を走らせた。車の中でも会話は途切れることはなかった。拓也の脳裏にはもしかしてと言う、衝動が熱を持って身体の中から湧き出る感覚を覚えた。車を降りると拓也はすぐ手を繋いだ。
頭の中は次の行動をいつ取ろうかと
必死で妄想を膨らませていた。
「拓也さんどうしたの」
「いや」
拓也は心の中を見透かされたようで、ドキッとした。
「エッチな事考えたんじゃない」
「いや」
「ダメよ」
拓也は花火が終わるまでずっと早苗の手を握っていた。
周りを見渡せば、暗闇である。
しかし、足の先には、隣の人間の身体があった。
しかし、拓也の燃え上がる情熱の火が、メラメラと燃えあがってくるのが、ひしひしと感じた。
今かと、早苗の顔を見た瞬間。
「拓ちゃん、どうしたの」
「汗一杯かいて、はい、ハンカチ」
花火も打ち終わり、拓也は時計を見ると午後10時を回っていた。拓也は早苗の住んでる小倉へと車を走らせた。
帰りは社内ではお互い無言であった。
「足立公園に寄って帰ろうか」
小倉駅から車20分の所に位置する。小倉の綺麗な夜景が見渡せる場所であった。この日の夜は少し肌寒い感じで拓也は上着を持って来ていた。展望台で、暫く夜の小倉を眺めている。その時、一瞬の隙を突いて拓也は、自分の着ている上着を脱いで、彼女に着せる瞬間、早苗が身体を寄せ合ってきた瞬間に拓也は早苗の唇を盗んだ。
それは、無数の星がくくいていた、小倉の夜であった。
「本当は、その後に、ホッペをぶたれるかと思ったよ」
「うふ」
次の日、朝から会社で早苗の顔を見るが、ムスッとしている。拓也はその日一日、なんだか、昨日の出来事はまずかったかなあと、ひとり、気を揉んでいた。仕事が終わり。拓也はLINEで早苗に、お疲れ様と打った。返事はすぐに来た。
「お疲れ様」
「今日は、ムスッとしてどうしたんだい」
「会社では、同僚よ」
「必要以上に会話はしないでね。私は、仕事とプライベートは割り切ってるの。それと」
「それとって、私は、男性恐怖症なの、もう、あんな事はしないでね」
拓也はまさかと思った。
早苗の意外な言葉に、次の言葉が出てこなかった。

男性恐怖症

女性同士であれば、それほど緊張や不安を感じることなく接することが出来るけれど、男性に対しては異常に緊張や恐さを感じてしまい、思うように接することが出来ないという人も多いものです。これが一番の悩みになっているのが、いわゆる男性恐怖症と言われている症状になります。でも、早苗と出逢ってから、そんな感じは絶対にしなかった。それよか、なんか、恋愛になったら、慣れてる感覚であった。よく考えてみると、婦警なんか、プライベートでも婦警してるわけはないですね。
早苗は、キスはおろか、手を繋ぐとか、身体を触るのも拒否をしてきました。でも、公園での出来事。拓也が唇を奪う瞬間に早苗は自然に身体を寄せてきたのだ。これには、早苗自信が驚いたようであった。早苗はとにかく、徐々に男性恐怖症から逃れたいと要求してきた。拓也もひとつ返事でうなづいたのである。そういや出逢った頃。拓也は早苗と会話する時に、口元を極端に手で隠す行動に、なんか、妙な女性だなあと感じていた。また、早苗は、やがて、30になろうとするのに、男性とお付き合いした経験がなかった。そういや、堀北真希さんは最低限の打ち合わせをして、その後もあまり喋らないそうです。本人の性格かもしれませんが、男性恐怖症という噂まで出るぐらいみたいです・・・。テレビのチャンネルをひねると、女優の堀北真希さんが出てた。台本の読み合わせに参加するものの、終了すると目に止まらぬ速さで帰ってしまうことで知られているが、実は堀北の人見知りはいまに始まったことではないという。
「一度共演したり、親しい知人を介して話をしない限り、自分から心を開くことがないと言われている。男性恐怖症という話もありますよ」拓也は悩んだ。これから、どうお付き合いしていけばいいのだろうか。
友達と恋人の違いは、無言でも何時間も一緒にいられる相手が恋人。もちろん恋人は、身体が目的でもあると拓也は考えている。それが、彼女に手が出せない。いや、出せるようにしなきゃいけないんだ。そうこう、考えて毎日が、流れていき、とうとう、3度目のデートとなった。拓也はツタヤに来ていた。女性誌に目をやると、占い特集がやけに飛び込んでくる。彼女の誕生日はたしか10月だったよな。天秤座に、B型。まづは、自分の誕生日に目をやった、曜日占いって奴がよさそうである。
拓也の誕生日は、12月8日である。なんとなく、当たってる気もするが、そのページの上に、相性の良い相手とある、あったのだ彼女の誕生日が。参考までに彼女の誕生日のページを見たが、占いによると、とてつもなく、自分からは告白できないタイプらしい。しかし、結論は、やっぱり占いじゃ彼女の事は理解できないね。拓也はツタヤを後にした。3度目のデートの日がやって来た。恋愛のマニュアル本を読むと、デート3回目には、やっちゃえとある。早苗は男性恐怖症だよ。拓也の頭の中は妄想で脳みそがパンクしそうであった。待ち合わせ場所は、小倉駅にした。駐車場に車を置いてわざわざ、待ち合わせの為に歩いて来たのだ。早苗はバスで来たらしい。拓也は、ピンク映画を観に行こうかと、いきなり、早苗に問いただした。
「えっ」
早苗は嫌と言った。拓也は困った顔をした。とんでも無い事を早苗さんに口走ってしまった。気を取り直して
「星の王子様と私を観ようか」
「はい」
2人は映画館に入っていった。次の日会社へ出勤すると相変わらず早苗は拓也に対して、ムスッとしていた。拓也はなんかイライラ。昼休みにLINEで呟いた。
早苗「今月は貧乏です」
拓也「俺、転職しようかな」
早苗「いつか辞めると思ったわ」
「この会社にいても会社で話す事はないわ」
「辞めてゆっくりすると言いよ」
拓也「俺ね、早苗さんが理解出来ない、話す事ないって、それ近寄らないでという事」
早苗「私は藤原さんが理解出来ませんけど」
拓也「会社で話せるようになるまで、俺、会社休みます」
「俺、この会社、面白くなくなったのは、早苗さんの性格変わったから」
早苗「私はこの会社辞めませんよ」
「この会社が好きだから」
拓也「次の文句が打てないや」
早苗「これで、お別れです、さようなら」
しまった。
思い付きで、ポンポンLINEしてた拓也は、取り返しのない事態になってしまった。
拓也「これで、きっぱり辞められます」
早苗「お疲れ様でした」
拓也「このリスクは原子爆弾並みです」
早苗「さようならしたはずですけど」
拓也「また最初からやり直そうかと」
早苗「もう、会う事はないよ」
拓也「そうですか」
早苗「私の携帯番号消して下さい」
「藤原さんの携帯番号、電話する事ないので解除しました」
拓也「最後に、まだ、会社辞めてませんから、それと悪気はなかったです」
早苗「そうですか」
「私との関係は無くなりました」
次の言葉に、拓也は、無意識の内に、綱を辿っていた。
早苗「もう、好き同士じゃなく友達に戻りました」
「お付き合いは、なかった事にして下さい」
「早く退職届けを出したらどうですか」
「早苗さんじゃなくて、美咲と呼んで下さい」
この言葉を最後に、拓也の携帯のLINEから、早苗が、ブロックしてきた。

早苗は一昨日の拓也との出来事を浮かべながら。ここは小倉ロイヤルホテルのフロアにいる。そこへ母が父と共にやって来た。2人は娘の門出を祝う時の様な満々とした笑みを浮かべている。一方の早苗は何か浮かぬ顔だ。三人は桜の間に案内される。その部屋には身長180センチ程の細身の身体の質素な雰囲気のする真面目な第一印象の男性38歳が座っている。これから2人のお見合いが始まる。縁談の話は二週間前から進められていた。早苗は拓也とのLINEでブロックしたのは、ちょっとした意地悪な気持ちになりやってしまった。本当は拓也とのデートは嬉しかった。昨日は何も連絡はしなかった。
拓也は小倉一のジュエリーショップに来ている。店員に70枚の札束を渡すと。手の中には、ハート型のティファニーのダイアモンドが今や今かと箱の中から出してくれと小さな声が拓也に囁いているようだ。店を出ると拓也の愛車の姿はない。昨日、突然の衝動で愛車を売り払い。お金に変えた。その足で小倉ロイヤルホテルに向かう。早苗がお見合いすると友達から聞いた。ブロックされた翌日。拓也の咄嗟に思いついた行動だ。
お見合いを終えた2人とお互いの両親はロイヤルホテルの待合室でタクシーを待っている。そこへ大きな叫び声が聞こえてきた。拓也だ。その手の中にはしっかりとティファニーのダイアモンドが握り締められている。
あれから3ヶ月が経ち2人はロイヤルホテルで近いの言葉を、そして早苗の左手の薬指に結婚指輪がはめられ2人の唇が重なり合った。

ここまで読んでくれてありがとうございました。



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