この結婚は間違いじゃない

フレデリック

✳︎✳︎✳︎

アーサー、生きていてくれて嬉しい。


リディアも……これで幸せになれる。


これで、いいんだ。

離縁を告げたリディアは、瞳を潤ませていた。
余程、アーサーの無事が嬉しかったのだろう。

そして、この2年間は辛かっだだろう。

ずっと君を見てきた。

いつも図書室で見かけていた。気がついたら目で追うようになっていた。

リディアと話すきっかけが欲しくて、わざと君のお気に入りの席に座ったんだ。

それからは、ずっと君の隣に座るようになった。
楽しそうに笑うリディアを見ると、幸せだった。

君も同じ気持ちだといいな、と浮かれていた。

まさか、リディアがアーサーのことを好きだとは知らずに。

あの笑顔は、私だけに向けてほしかった。

悔しかった。

何も知らなかった自分が、馬鹿みたいだ。


アーサーはいい奴だ。

信用できる。 あの後も、何度も私にリディアに告白するよう言ってきた。
私の気持ちを知っているから、気を遣って。 ほんとにいい奴だ。


だが、アーサーがいなくなって5年。

私は、これはチャンスだと思った。

すまないアーサー。

友人の妻を奪う私は非道だ。許してくれ。

だが、どうしてもリディアのことが忘れられないんだ。


側にいたいんだ。大切にしたい。

せめて、決して触れることはしないと誓う。

この2年その誓いを守ってきた。


何度も破りたくなったが。

アーサー、お前を笑顔で出迎えられそうにない。

リディアを誰よりも見てきたのは私だ。


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