この結婚は間違いじゃない

アーサー

✳︎✳︎✳︎

「アーサー、やっと国に帰れるな。愛しい奥さんが待ってるんだろう?」

「奥さん?」

「ほら、リディアだよ。フレデリックが言っていたぞ。婚姻届がどうのって。卒業してすぐに駆り出されたから、お前結婚式もしてないだろう」

「あぁ、婚姻届ね」

「まぁ、とにかく、元気でがんばれ!」

「ありがと」

アーサーはこの7年間共に過ごした仲間と抱き合い、別れの挨拶を交わす。



一時は捕虜として捕縛され孤島に送られていたが、すぐに解放された。


解放されたものの、その後もトラブルに巻き込まれたり、助けてくれた村の荒れた地を開墾したり、なんやかんやと各地を転々とするはめになった。


そうして、先日やっと自国軍に保護されたのだ。


これでやっと、帰れる。

フレディとリディアはどうしているだろうか?


こんなことになるのなら、あの時すぐに返せば良かった。


アーサーは、服の裏の隠しポケットを手で触れる。
縫い付けてある袋の無事を確認して、安堵のため息をもらす。

これだけは、どんなことがあっても死守してきた。厳重に保護している。


リディア、やっと君にこの婚姻届が返せるよ。

あの日、フレディから頼まれたんだ。


リディアに告白したいから、誰も来ないように見張っていてほしいと。

卒業式の帰りに、図書室へ来る物好きなんていないのに。

フレディとリディアくらいだろ。


緊張して洗面所に行きたくなったと言うから、フレディが戻るまで仕方なく代わりに座ってたんだ。

ちょっと眠かったし。


まさかそのタイミングで、君が来るなんてね。

リディアが好きなのはフレディだよね?


僕でさえ気づいたのに、フレディは納得しないし。

まぁ、いきなり婚姻届の告白の現場を目撃したら、勘違いするよね。

とにかく告白しろ!と、けしかけたけど、どうなったかな

思わせぶりなメモを、フレディの前で書いて預けたけど。

まぁ、直接会って話せばいいか。

あそこに見えてきた2人に。

2人とも思い詰めた表情のように暗いけど。

「ただいま! フレディ!リディア!
あー、なんか僕帰って来てまずかった?」




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