国一番の大悪女は、今から屋敷の外に出て沢山の人達に愛されにいきます
だから、「ユーキス国で噂の王女」なんてどうでも良かった。

良かったはずなのに……初めて見た噂の人物は、噂を信じる令嬢たちに立ち向かっていた。

王女が噂通りの人物であろうがなかろうが、私には関係ない。

彼女が勝手に頑張れば良いだけ。

そう思っていたのに。





令嬢たちに立ち向かう彼女の手が小さく震えているのを私は見てしまった。





そして、興味のままに話しかけた彼女は知れば知るほど眩しくて。



「いつだって諦めずに立ち向かうと決めていますの。だって、きっとそれが格好良い王女というものでしょう?」

「この噂は……私がユーキス国の王女として、国を守った証ですの。どれだけ私が国一番の大悪女と呼ばれようと、それだけは変わらない。私は今のこの状況を全く後悔していないのです」

「私は、自分でユーキス国一番の悪女になることを選んだのです」



彼女を見ていると、王族から逃げた自分が恥ずかしくなるほどだった。

それでも、何より……




あまりに愛おしかった。



私が守りたいと思った。



強くなりたいと思った。



彼女に恥じない人間になりたかった。
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