国一番の大悪女は、今から屋敷の外に出て沢山の人達に愛されにいきます
分かっていたこと。

それなのに……どうして涙が溢れそうなの。

父はユーキス国のことは考えてくれている人だ。

それに隣国のマリス国の王子との婚約など、私だって父と同じ判断を下すはずだ。

この政略結婚には、魅力があるもの。

そう自分に言い聞かせる自分があまりに滑稽(こっけい)に感じて。

だから……






こんな運命があるなんて考えもしなかったの。







父が私に見せたマリス国第二王子からの手紙の最後には……





「クラヴィス・ルーカリア」と、署名されていた。




イージェル公爵家の子息であるはずのクラヴィスと同じ名前の王子。

別人だと分かっているのに、何故か胸がざわついてその可能性を否定出来ない。

どこか風格を感じさせるクラヴィスが王族だったとしたら……そんな考えが浮かんでしまう。
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