国一番の大悪女は、今から屋敷の外に出て沢山の人達に愛されにいきます
息が苦しく感じるのに、心が喜んでいるのが分かる感覚。

それはきっと私の気持ちを表していて。

目の前に座るクラヴィスから目が離せない。


「マリーナ?」


言いたいことは沢山あるはずなのに、何故かすぐに言葉が出てこなくて。

そんな私にクラヴィスは気にせずいつも通りの挨拶をするような声色で、「また会いにくるよ」と笑った。

王宮の自室に戻った私をリーリルが慌てた様子で訪ねてくる。

その後、すぐにリーリルの後を追うようにクロルも部屋に訪れた。


「お嬢様! 婚約を申し込まれたと……!」


リーリルの言葉に私は小さく頷いた。

頷くだけの返事をした私の顔をリーリルが心配そうに覗き込んでいる。


「お嬢様、乗り気ではないのですか……?」


リーリルの言葉に私は慌てて首を振った。
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