国一番の大悪女は、今から屋敷の外に出て沢山の人達に愛されにいきます
フリクが何を言っているのか分からない。
頭が理解しようとしてくれない。
「何を……言っているのですか……」
「つまり、君が一番会いたい人にはもう会わせられないということだ」
フリクは視線を落としたまま、話を続けていく。
「俺にとっては君は弟を殺した人間。ただそれだけだった。だから、国民全員に嫌われて仕舞えば良いと思って、無理難題を出したんだ」
「それでも、俺が間違っていたのだと思う……だって、当たり前だが君が弟を殺したわけじゃない」
「それに、国民に嫌われて屋敷から一歩も外に出れなくなった君は、使用人の前では笑顔なのに、部屋に一人になると寂しそうな顔を浮かべていた……決して涙は溢さずに。そんな君を見ていて、俺も気持ちが変わっていった」
「だから、大悪女になった君に『好かれてきて』なんて意味の分からない課題を出したんだ」
フリクが私の頬に手を伸ばしたが、触れる直前で手を止める。
「俺が君に触れる資格はないな」
フリクはそう述べて、悲しそうに笑った。
「ねぇ、マリーナ。これで俺が君に会うのも最後だろう」
「何か言いたいことはある?」
フリクがわざとらしく明るい声を出した。