国一番の大悪女は、今から屋敷の外に出て沢山の人達に愛されにいきます
頭が整理出来ない感覚がするのに、どこか冷静さが戻り始めている自分が怖かった。

それでも、この機会を逃せば、もう私がフリクと話せることはないだろう。





「フリク、貴方はまだ私のことを恨んでいるのですか?」





「恨んでないよ。本当に」





ゆっくり消えていくフリクの姿と合わせて、声も小さくなっていく。






「マリーナ、ごめんね。君を国一番の大悪女にしたのは俺だ」






それだけ言って、フリクの姿がもう見えなくなっていく。




「待って下さい!」




私の大きな声でフリクが消えて行くのが一瞬止まった気がした。




「貴方が何を言おうと、私を大悪女にしたのはフリクではない。フリクの手を取ると決めたのは私です」

「それに私は国一番の悪女で終わるつもりはない。国一番の最高な王女になりますわ」

「これで会うのが最後でも構いません。それでも、どこかで見ていて下さい。私と取引をしたフリクには、私がどんな王女になるのか見守る義務がありますわ」




私の精一杯の勇気はフリクに届いただろうか。

それでも、最後にフリクの声がもう一度聞こえた気がした。






「マリーナ、幸せになって」






言葉に出来ない気持ちが溢れてくるのに、どうすることも出来なくて。

それでも、もう振り返ることもしない。

前に進んでいくしかない。

だって、きっとフリクもどこかで見守っているから。
< 126 / 127 >

この作品をシェア

pagetop