国一番の大悪女は、今から屋敷の外に出て沢山の人達に愛されにいきます
「ねぇ、クラヴィス。どこが駄目かしら? どんな小さなことでも教えて頂きたいのです」

「……」

「クラヴィス?」




「いや、君はそういう人間だったなと思って。しかし、まず始めに考えなければいけない大事なことがある。普通に優勝するのか、根回しして『八百長』でマリーナを優勝させるかだ」




「っ!」




クラヴィスは私の表情を見極めているようだった。

「マリーナはどうしたい?」



「私は……(ずる)自体が全て悪いことだとは思いません。国を成立させていく上で、真っ向勝負だけではどうにもならない時はある。それこそ他国との取引の時に手の内を全て明かしていては上手くいくはずがない」

「しかし、狡には狡でリスクがあります。今回、その狡を行うのは【あまりに発覚した時のリスクが高い】。発覚した場合、【私の悪女の噂はさらに広がる】」

「そして今回の場合、発覚するリスクがあまりに高いですわ。どうにか私の味方を取引で作ったとして、私は国一番の悪女。すぐに裏切られるに決まっています」



「つまり、今回は普通に勝ちたいと?」



「ええ。それに、私はもう馬術も出来る優秀な王女を目指していますの。そちらの方面で協力して欲しいですわ」



その時、クラヴィスは初めて会った時のように「ははっ」と吹き出すように笑った。
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