国一番の大悪女は、今から屋敷の外に出て沢山の人達に愛されにいきます
クラヴィスが振り返って私の顔をじっと見つめている。



「……赤い」



クラヴィスがそう呟いたように聞こえた。



「だってこうすれば、君のそういう顔が見れるだろう?」



「からかわないで下さいませ……!」



私がクラヴィスに言い返そうとした瞬間、クラヴィスが手綱を動かした。

馬が歩き始めてしまう。


「マリーナ。いいから、前を向いて。景色を楽しんでみるのも楽しいよ?」


クラヴィスはいつも通りの表情で、まるで私だけが緊張しているような気がしてどこか悔しかった。
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