国一番の大悪女は、今から屋敷の外に出て沢山の人達に愛されにいきます
誰も前にいないコースを私は走り抜けていく。

後ろが気になるのに、前しか見えないような感覚がどこか面白い。

周りの声もスタートする前より全然聞こえない。

それでも……




ゴールテープを切る寸前、「マリーナ!」と叫んだクラヴィスの声が聞こえた気がした。




ゴールテープを一番に切り、馬が止まる。

周りの音や歓声が一気に耳に入ってくる感覚がする。

会場を見渡せば、罵声ではなく歓声が聞こえる。

いや、罵声も混じっているのかもしれない。

それでも、歓声も聞こえるのだ。

それが何より嬉しくて。

私は気づいたら、観客席を見渡していた。
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