国一番の大悪女は、今から屋敷の外に出て沢山の人達に愛されにいきます
「ここから見ると、皆さんがあまりに遠く感じますわ」




私の言葉の意味がまだ誰にも伝わっていない。

だから、沢山の観客席にいる生徒たちと目を合わせるような気持ちで前を向いた。



「ここからでは、皆さんの性格や人柄、好きな物は分からない。だって、遠いですもの」



私は、前を向いたまま続けた。




「きっとそれと同じことだと思うのです」

「今ここで『私が噂とは違う人物だ』と言ったところできっと誰も信じないでしょう。だから、もっと近くで私を見て下さい」

「遠目で陰口を言っていては、私の本性に気づけない。私が噂通りの人物かも判断出来ない。私が何も考えずにただ悪政を行う人間か『皆さんの目』で判断して下さい」




さぁ、スピーチの最後には一番伝えたいことを。




「言いたいことがあるのでしたら、面と向かって言って下さいませ。悪口でもいいのです。全てにしっかりと向き合うことを約束しますわ」




悪い噂が広がった世界で生きていると、ずっと誰とも目が合っていない気がした。
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