国一番の大悪女は、今から屋敷の外に出て沢山の人達に愛されにいきます
クラヴィスはもう寮の前に馬車を停めて、待ってくれていた。

私を見つけると、クラヴィスはすぐに馬車から降りてくる。


「お早う、マリーナ。あれ、もうフードを被っているの? 確かに街では君の悪女の噂は消えていないし、まだ顔を知られない方が良いかもしれないけれど、今は……」


きっとクラヴィスは寮の前からフードを被るのは、早いと思っているのだろう。


「前も言いましたが、まだ私の噂は消えていませんわ。学園の生徒に二人で街に出かける仲だと思われない方が良い。クラヴィスの評判に関わりますわ」


私がそう述べた瞬間、クラヴィスがパッと私のフードに手を伸ばし、私のフードを頭から下ろした。






「っ!」






「確かに私はマリーナと関わることで評判が下がるリスクを始め君に提示した。でも、もういいよ」






「え……?」






「今はもう噂よりも、評判よりも、ただ君と堂々としていたい。それに悪いことをしていないのに、コソコソと隠れるなんてマリーナの言う格好良い王女とは違うだろう?」






わざとクラヴィスは私を揶揄うようにそう仰って、私の心の憂いを晴らしてくれるのだ。

それでも、私はやっぱり自分のせいでクラヴィスの評判が落ちるのは嫌だと思ってしまう。

だから、私は誤魔化すようにすぐに馬車に飛び乗った。
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