国一番の大悪女は、今から屋敷の外に出て沢山の人達に愛されにいきます
カフェに入ると、クラヴィスがメニューを物珍しそうに眺めている。

「マリーナは好きなデザートはあるの?」

「私はスコーンが好きですわ」

「へー、いいね。私もスコーンしようかな」

「クラヴィスは普段甘いものはあまり食べられないのですか?」

「沢山食べる方ではないけれど、たまに今日みたいに食べたくなる時があるんだ。甘いものは疲れも取れるだろう?」

小さなことでもクラヴィスのことを知れる機会があることが嬉しかった。

クラヴィスはあまり自分のことを話さないから。

カフェで美味しいスコーンを頂いた私たちは、店を出て次に行く場所を探していた。

その時、クラヴィスに通りかかった女性が声をかけた。


「あの……!もしよければ、一緒に……」


クラヴィスは爽やかに断っていたが、どこか近くにいることが気まずくて、私は数歩だけ下がっていた。

その時、路地裏から「助けて!」と女性の小さな声が聞こえた。
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