呪われた辺境伯と視える?夫人〜嫁いですぐに襲われて離縁を言い渡されました〜

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「エリー様、少しよろしいですか」


「えぇ、どうぞ」

ノックの後に、マクスは入室すると紅茶をテーブルに並べる。その後、マクスは壁際に控えた


「良ければマクスも一緒にいただきましょう。お願い」

私はマクスをお茶に誘った。
テーブルに彼のカップも用意して。

遠慮するマクスに
「最後だから」と口にすると、

はっとした表情を浮かべて、黙って席に着いた


私がカップに紅茶を注ぐのを見届けると、おもむろに口を開いた。


「エリー様、最後とおっしゃいますのは…提出なされたということでしょうか?」

今日、あれから半年が経つ。
約束の期限の日。

貴族院には、私が書類を提出するだけ。必要事項は全て記入済みだった。



最初こそ酷い扱いを受けたけれども、メリッサ様にお願いされて、
一緒に過ごすうちに、段々と居心地の良さも感じていたのも事実。

でもそれは、愛情とは全然違う

秘密を共有した同士のような、知人のような感情


けれど、ここで旦那様やマクスと過ごした日々は、実家では決して感じることのなかった穏やかな時間だった

あんな事さえなければ…

ここを出ても、あの家に戻るつもりはない


一度も手紙さえも送ってこない

父は、女性蔑視の塊のような人だった


ここを出て、姓を捨てて自立できるように働こう。

先日知り合った宿屋の方に働かせてもらえないか相談してみようかしら


「エリー様?」

「あ、ごめんなさい。私から誘っておきながら考え事をしてしまって。

提出のことなのだけれど、マクスが出してくれたのでしょう?

自分で出そうと思っていたのだけれど、



「私は、何も致しておりませんが」





「え?だってそんなはずないでしょう?
今朝出そうと思って、机に確かに置いていたもの。
でも、見当たらなかったわ。てっきりマクスが出してくれたのかと」

「私は許可なくそんなことは致しません」


「えぇっ、確かに言われてみればみればそうよね。では、書類は一体どこに」

「まさか旦那様が…」

「旦那様がどうして?」

「いえ、確認して参ります。」


「私も一緒に行きます」


私達は旦那様の元へと向かった。

旦那様は部屋にはいなかった。

邸内を順番にみてまわり、旦那様は見当たらない。それで手分けして捜すことにしようと思った時だった。
話し声が聞こえてきた。話し声は応接室から聞こえる。

旦那様は応接室にいるようだった。

「はて、このお邸にお客様が訪れることはないのですが…」


マクスは躊躇った後にノックをする。

許可の言葉を待ちマクスと共に入室した。

入室してすぐに、旦那様と向き合って座っている男性が目に入る。

「どうしてここに…」


思わず心の声が漏れる


「エリー」

ソファーに座っていた男性は私へと近づいてくる

彼の一歩一歩近づく足音と共に自分の鼓動も早くなる


「アンディー」


たったの半年なのにアンディからは幼かった雰囲気が消えていた。どっしりとした
雰囲気へと変わっていた


顔には傷痕もあり、その傷痕が厳しい経験を物語っている。

私の目の前に来るとアンディは片膝をついて私の手を引き寄せる

「エリー、あの約束を覚えてる?

先日功績を讃えられて、

男爵の位と領地を授けられた。

だから迎えに来たよ。」



は、半年で…?

いったいどんな功績をあげたというのか、

想像するだけで恐ろしい。

「あ~2人の世界に入ってるようだが、ここは私の邸であって、彼女は私の妻だ、
何度も言っているが、」


「#元__・__#ですよね?既に離縁は成立している」


「そんなはずはない!書類だって」


旦那様は慌てて部屋を飛び出すと、すぐに戻ってくる。

「まさかっ、貴様、書類をぬすんだのか」


旦那様はアンディに詰め寄っていた

そんな旦那様の手をなんでもないようにあっさりと交わすとアンディは私の傍に近づく


「盗んだだなんて人聞きが悪いですね。
だいたいあの書類はエリーの手元にあったのでは?
盗んだのだとしたらそれはあなたですよね?

僕はただエリーの気持ちを優先したまでです」


「あ、あの書類のことも把握しているなんて部外者の君がおかしいだろう。

エリーの気持ちは、エリーにしか分からないないだろう!」




激昂している旦那様とは違い、アンディは終始落ち着いていた。

「では、本人に確かめてみましょうか」

そう言うとアンディと旦那様は私の方を向く

と言ってもアンディは既に私の腰に手を回して引き寄せているのだけど


「わ、わ、わたしは一一

お、お世話になりました。

旦那様。お約束通り半年が経ちましたので、…
お別れさせていただきたく…」

「そんな!!エリー、き、君は、少しづつ打ち解けてくれてるのだと…君と過ごす日々が、嫌だエリー、どうか考えなおしてくれ!」


「見苦しいぞ、キャンベル辺境伯」

「貴様がーーー!」


一ボコッ一

アンディに突進した旦那様はあっさりと返り討ちにあう。

「その程度でよく辺境伯が務まるな」

「あっはははっははっは。クリフったらほんとうにだらしない。いいきみだわ。」


「メリッサ様」

「どう、クリフ、失恋の痛みは?」

高らかな笑い声と共に、いつの間にかメリッサ様が加わっていた。

マクスには相変わらず視えていないようだ。けれど、アンディが私を守ってくれると察して黙って静観することに決めたようだった。


アンディには視えているようで、メリッサ様と一瞬目線を交わして頷いていた。


「は?私は失恋などしていない。エリーとは、ちょっとした誤解があるだけだ。私達は上手くいく」


「ほんっとーにいつまでも子供なんだから。ふふ、まぁ、そこが可愛いのだけどね。

失恋の痛みがつらいでしょう?
それくらいの痛みではぜんっ一一一一一一ぜん、足りないけど。

ふふふ、大丈夫慰めてあげるわ。一緒に行きましょうね?」


「はっ?なんだ?体が動かない。メリッサ何をしたーーーーうわーーーー」

旦那様は魔力のこもった鎖に拘束されて身動きがとれずにジタバタしている。

「最初から周りくどいことなんてせずに、こうすれば良かったわね。
ねえ?クリフ。」

拘束されて宙に浮いた状態の旦那様に近づくと、メリッサ様は、人差指で顎を掬い上げた

「ま、ま、待て待てメリッサ。
これは何だ?一緒に行くとは?
一旦これを解いてくれ、分かるよなメリッサ。話し合おう」



「お頭の弱いクリフには難しかったかしら?

時間ならたーぷりとあるから、
大丈夫よ。
あなたの腐った性根を叩き直すから。ふふ。誰にも見つからない場所でね。」


「メリッサ、お、お、お前は、やっぱりヤバイ奴だな。だ、だから、苦手だったんだ、無駄に美人な癖して性格が歪んでるだろ!!」

「あーら、そんな無駄口を叩けるのは今のうちだけよ。ふふふ、あそこでは、私は何をしても咎められることはないの。この意味分かるかしら?ふふ」


「おい、よせよせよせよせ、メリッサーーーーやめてくれーーーーー!!!
ぎゃーーー一!」

テーブルの上には、いつの間にかオルゴールが置かれていた。

旦那様は絶叫と共にメリッサ様のオルゴールに吸い込まれていった。

「エリー、オルゴールを持っていてくれてありがとう。おかげで色々出来たわ。
ふぅ、これで厄介ごとが片付いたわ。、
久々に家族に会ったら驚いてたけど。

私が合図したら、王命が下るわ。

おめでとう!アンドリュー、あなたが新たな辺境伯よ。

家族は私には甘いから。

さてと、

ざっと100年はクリフを調教…いえ、教育して過ごすわね。

そうね、マクス達はそのままにしようかしら。
マクスは元気になったと喜んでるし、エリーがこの後どうなったのか知りたいし。

領民が不思議に思わないように記憶操作の魔法をかけておくから心配しないで。

あなた達の子孫に会えるのを楽しみにしてる。

あ、そうそう、
それまでオルゴールをよろしくね。

じゃあね」

話し終えるとメリッサ様がすぅっと光に包まれてオルゴールの中へと消えていった

嵐のようにメリッサ様たちが去ると静けさが戻ってきた。

呆気にとられて放心していると、アンディがおもむろに懐から包をとりだした。


「エリーこれを」


包みにくるまれていたのは一輪の赤いコダの花

「アンディ、これ、ちょっと潰れてる」

少し潰れた花だったけれど、とても嬉しい

「エリー、約束通り迎えにきた。だから
今度は君が約束を、あの時の僕の願いを叶えてくれたら嬉しい」

「アンディ」

言葉にするのは恥ずかしくてどうしようもないけれど、

羞恥心を堪えて、真っ赤になりながら声にだす

「わ、私の傍にいる権利をあなたに」

「それだけじゃないよね。伴侶としてがぬけてる。結婚しようエリー」

私の頬に手を添えて真っ直ぐと見つめてくるアンディ

その瞳には、あの時感じたものよりも情熱的な感情が宿っていた。
目を閉じると優しく唇が触れ合うのを感じた




青いコダでずっと私へと想いを伝えていたアンディ


白いコダは旦那様へむけてのもの

旦那様への別れ

そして迎えに行くという意味を込めて

「アンディ、でも、いつ邸に忍び込んだの?」

「ん?邸を訪れたのはきょうが初めてだよ。全て整えてから、迎えに行くときに訪れようと決めていたから」


アンディの言葉が本当なら辻褄があわない

「だって離縁届は…」

「あぁ、そのことについては、

親切なだれかが僕に報せてくれたんだ。

離縁が成立したことや色々とね」


エリーへの…仕打ちの事も…」

!!

メリッサ様なのね

仕打ちって…

じゃあアンディは、

私が襲われるようにして純潔を奪われたことも知っているのね


「アンディ、私…

穢れてる…あの頃とは…違う


あなたに黙ったままいられたらと…

早急に離縁が認められたから…

白い結婚であったと …誤解してくれたらと

浅ましい考えを持ってたの…」


「エリー、そんな顔しないで。

エリーは昔も今もこれからも、僕の大切なエリーに代わりない。


僕の気持ちは、誰にも負けないつもりだよ


何発かお見舞いした気がするんだが、不思議なことに顔に全く傷がつかなかったんだよね」

「アンディ?もしかして旦那様と…」


「エリー、離縁したのだから、旦那様じゃない。あんな奴とは一切の関係はない。記憶に残す価値もない。
もう何も心配はいらないよ。
これからは一緒だから」

「オホン…
あーお取り込み中に失礼します。

気のせいでなければ、
私には、旦那様が吸い込まれたように見えたのですが…
後ほどご説明いただければと…

今は…

ご遠慮致しますね」


いけない、マクスがいたのだったわ。
マクスが退室するとアンディと共に笑い合う。


そうして一一一

アンディとエリーは結婚して2人で辺境の地を守って暮らした。

3人の子供に恵まれて、孫が生まれて、ひ孫が生まれて


2人が亡くなってからも子供達の傍にはいつもマクスが見守っており、美味しい料理をビルが作り、平和な時が流れた。


100年経った時もメリッサ様は再び現れなかった。

100年ではまだ…クリフの教育が終わらないのだろうか…

あのオルゴールは2人の子孫に今も大切に守り受け継がれている



 ~fin~








最後までお付き合いくださった方がいるか分かりませんが、感謝の気持ちでいっぱいです!
お読みいただきありがとうございましたm(_ _)m









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