アイドルに推された私 仕事の依頼主は超人気者
年の瀬
「今年もあとわずかか~本当にこの一年駆け抜けたね」
『RAIN』のリーダー友が言った。
ここは、某テレビ局の控室、年末まで過密スケジュールの『RAIN』、
年明けに少しだけ訪れる休暇を楽しみに今日も仕事に励んでいた。
「はぁ~」
「ん?」
「はぁ~」
「え?」
「あ~」
「悠のヤツどうしたんだ?」翼が友に聞いた。
「さぁ~? クリスマス以来、ずっとあんな感じ」友が答えた。
「珍しいよな。悠が溜息連発なんて……」翼が呟く。
「なんかさ、あったみたいよ……クリスマス中に」心が小声で言った。
「へぇ~、そうなんだ……」良が呟いた。
「俺がさ、悠にそんなに気になるならすぐにでも連絡しなよって言ったら、
悠、何て言ったと思う?」心が言った。
「何て言ったの?」皆が聞き耳を立てる。
「連絡先も、名前も知らないんだってさ……てか教えてもらえないんだと」
心の話を聞いた翼、友、良は驚き、
「え~、何それ……信じられないよな。『RAIN』の悠に名前と連絡先を
教えないなんて……。今時、いるんだそんな子」と呟いた。
「唯……今、何て言った?」親友の千春が唯に聞いた。
「だから、そのこの名刺の人からスカウトされた……」
驚く千春。
「スカウトって? いつどこで?」
「クリスマスイブの夜、仕事帰りに街中で……」
「で、何て言われたの?」
「事務所に入らないかって……それで、一度見学においでって」
「唯、凄いじゃん。芸能人になるの?」
「いや……多分無理だと思うけど……」
「そんなことないよ。唯、魅力あるじゃん」
「また、そんなでたらめを……」
「でもさ、唯が芸能人になったら、『RAIN』にも会えるんだよ。いいなぁ~、
もし会えたら、サイン貰ってね」と嬉しそうな千春。
「うん……そうだね。そうなればいいね」と苦笑いする唯だった。
ここは、Mエンターテイメント本社社長室。
「あの子からの連絡はあったの?」
Mエンターテイメント社長の雅がマネージャーの田代に聞いた。
「いえ、あれからまだ連絡はないですね」
「そう……」
「年明けにでも連絡してみます」
「そうしてちょうだい……」
「しかし、驚きましたよ。社長自らスカウトされるってよほど、あの子のことを
気に入られたのですね……」
「田代、あの子を見て感じなかった?」
「はい、なんとなく……いや、わかっています。社長のお気持ちは……」
「でしょ? あの子、なんとしても手に入れないと……」と雅が言った。
年末の過密スケジュールをこなす悠、今日も夜遅く帰宅する。
冷蔵庫を開け、作り置きのおかずが入った容器を手に取ると、
「キヌコさん……元気かな?」と呟いた。
おかずを温め、缶ビールを片手にスマホを操作する悠が手を止めた。
悠は、雅社長が何故キヌコさんをスカウトしたのか、その理由に気がついていた。
『RAIN』のライブをキヌコさんが最初に見に来た時、最前列のど真ん中にいた彼女。
グッズを何も持たずに手拍子だけをしてた彼女が目立っていたのも事実。
しかし、メンバー全員が近寄っていく程にキヌコさんから目が離せなくなったのも
事実……。
キヌコさんから放たれる独特の雰囲気、サラサラの黒髪ショートヘアと本人の
全身から滲み出る聡明さ、可愛さと爽やかさ……。
それは超人気アイドルグループ『RAIN』の悠だからこそわかること。
選ばれた者だけが放つオーラ……それが理由だったからだ。
『RAIN』のリーダー友が言った。
ここは、某テレビ局の控室、年末まで過密スケジュールの『RAIN』、
年明けに少しだけ訪れる休暇を楽しみに今日も仕事に励んでいた。
「はぁ~」
「ん?」
「はぁ~」
「え?」
「あ~」
「悠のヤツどうしたんだ?」翼が友に聞いた。
「さぁ~? クリスマス以来、ずっとあんな感じ」友が答えた。
「珍しいよな。悠が溜息連発なんて……」翼が呟く。
「なんかさ、あったみたいよ……クリスマス中に」心が小声で言った。
「へぇ~、そうなんだ……」良が呟いた。
「俺がさ、悠にそんなに気になるならすぐにでも連絡しなよって言ったら、
悠、何て言ったと思う?」心が言った。
「何て言ったの?」皆が聞き耳を立てる。
「連絡先も、名前も知らないんだってさ……てか教えてもらえないんだと」
心の話を聞いた翼、友、良は驚き、
「え~、何それ……信じられないよな。『RAIN』の悠に名前と連絡先を
教えないなんて……。今時、いるんだそんな子」と呟いた。
「唯……今、何て言った?」親友の千春が唯に聞いた。
「だから、そのこの名刺の人からスカウトされた……」
驚く千春。
「スカウトって? いつどこで?」
「クリスマスイブの夜、仕事帰りに街中で……」
「で、何て言われたの?」
「事務所に入らないかって……それで、一度見学においでって」
「唯、凄いじゃん。芸能人になるの?」
「いや……多分無理だと思うけど……」
「そんなことないよ。唯、魅力あるじゃん」
「また、そんなでたらめを……」
「でもさ、唯が芸能人になったら、『RAIN』にも会えるんだよ。いいなぁ~、
もし会えたら、サイン貰ってね」と嬉しそうな千春。
「うん……そうだね。そうなればいいね」と苦笑いする唯だった。
ここは、Mエンターテイメント本社社長室。
「あの子からの連絡はあったの?」
Mエンターテイメント社長の雅がマネージャーの田代に聞いた。
「いえ、あれからまだ連絡はないですね」
「そう……」
「年明けにでも連絡してみます」
「そうしてちょうだい……」
「しかし、驚きましたよ。社長自らスカウトされるってよほど、あの子のことを
気に入られたのですね……」
「田代、あの子を見て感じなかった?」
「はい、なんとなく……いや、わかっています。社長のお気持ちは……」
「でしょ? あの子、なんとしても手に入れないと……」と雅が言った。
年末の過密スケジュールをこなす悠、今日も夜遅く帰宅する。
冷蔵庫を開け、作り置きのおかずが入った容器を手に取ると、
「キヌコさん……元気かな?」と呟いた。
おかずを温め、缶ビールを片手にスマホを操作する悠が手を止めた。
悠は、雅社長が何故キヌコさんをスカウトしたのか、その理由に気がついていた。
『RAIN』のライブをキヌコさんが最初に見に来た時、最前列のど真ん中にいた彼女。
グッズを何も持たずに手拍子だけをしてた彼女が目立っていたのも事実。
しかし、メンバー全員が近寄っていく程にキヌコさんから目が離せなくなったのも
事実……。
キヌコさんから放たれる独特の雰囲気、サラサラの黒髪ショートヘアと本人の
全身から滲み出る聡明さ、可愛さと爽やかさ……。
それは超人気アイドルグループ『RAIN』の悠だからこそわかること。
選ばれた者だけが放つオーラ……それが理由だったからだ。