アイドルに推された私 仕事の依頼主は超人気者
お礼の食事会
キヌコさんが四月末に退職することがわかった悠。
『連絡ノート』に今までの感謝の言葉を綴った。
唯が悠の部屋に訪問し、ノートを開き綴ってある言葉に思わず涙ぐんだ。
そして、テーブルの上にはメモ用紙が貼ってあった。
キヌコさんへ
お礼の言葉はノートに書いたので。多分、後任者への引継ぎが始まれば、
この交換メモ用紙も出来なくなる。
なので、最後にキヌコさんとキヌコさんの作った料理を一緒に食べたいんだけど。
それで、もうそちらの会社には連絡してる。一日だけ時間変更と延長してほしいんだ。
時間は、午後五時から午後九時まで。食べたいものはご飯、豚汁、だし巻き卵、焼き鮭、宜しくお願いします。
日程は引継ぎが始まる前日、メモ用紙を貼ることが出来る期日までかな……。
では、宜しくお願いします。
追伸、会社には模様替えに伴う大掃除って言ってあるからね。悠
仕事を終え、悠が帰宅するとテーブルの上には、唯からのメモが貼られていた。
悠さんへ
了解しました。他にも作れるのですがね。まぁ、希望ですから……。キヌコ
唯こと、キヌコさんが後任者へ引継ぎを行う前日がやって来た。
夕方、唯は悠の部屋に着くと調理を始めた。
午後七時、悠が帰宅した。
「キヌコさん、久しぶり」
「そうですね。ごはん、出来てますよ」キヌコさんこと唯が微笑んだ。
「うぁ~美味しそう。俺着替えてくる」と言うと悠は寝室へ入って行った。
着替えを済ませ椅子に座った悠、目の前にはキヌコ仕様の唯が座る。
「いただきます」と手を合わせると二人は楽しそうの食事を初めた。
「俺、キヌコさんの正体初めて知った時、かなりの衝撃だったんだ」
「私も、まさか悠さんが帰宅してくるなんて思っていなかったから。
それに、まさか、まさかの『RAIN』の悠だったなんて私本当に驚きました」
「キヌコさんと出会って本当に楽しかった。
別に会ってたわけじゃないんだけどさ、なんか言葉で繋がってるんじゃないかってずっと思ってた」
「私もです。色んなことが起きたけど楽しかった。
悠さんに出会わなかったら私の人生、普通で終わったのかもしれない。
でも、これからは未知の世界へ飛び込む心境……」
「そうか。キヌコさんの目、生き生きしてるよ」と悠が優しい眼差しで言った。
「ありがとうございます」
彼女の言葉を聞いた悠が、リビングの棚の引き出しから袋を取り出すと唯に渡した。
「キヌコさんこれ……」
「これは?」
「今までのお礼かな? 開けて見て」
唯が包みを開けると、
「わぁ~凄い……」と呟いた。
悠の顔を見る唯。
「これは、台本カバー」と悠が言った。
「台本カバー?」唯が聞いた。
「そう、キヌコさんがいつか台本をもらって仕事出来るようになった時に使ってほしいから……」
悠の言葉を聞いた唯。
「ありがとうございます。大切にします。そして、必ずこの台本カバーを使えるような女優になります」
と言うと台本カバーを胸に握りしめた。
嬉しそうに台本カバーを見つめる唯、
「ん? 悠さんこれは?」何かに気づいた唯が悠に聞いた。
「あ~これは、キヌコさんが名前。教えてくれないから
ネームの所に彫ってもらったんだ」
ネームケースの隅に小さく彫られている名前は『KINUKO』と記してあった。
唯はクスっと笑うと、
「本当にありがとうございました」と言った。
午後九時近くになると唯が言った。
「そろそろ、失礼します……」
と言うと、唯がわたあめのような
フワフワのアフロもどきのウイッグを頭に装着した。
それを見た悠は「別に、そのままでいいんじゃないの?
地下までの直通EVに乗ればカードキーは俺が返却しておくよ」
と言ったが唯は、
「いいえ、今夜は仕事ですのでキヌコさんとして帰ります。では」
と言うと、キヌコさんは玄関を出て行った。
玄関に一人立つ悠の姿は、とても寂しそうな表情を浮かべた。
『連絡ノート』に今までの感謝の言葉を綴った。
唯が悠の部屋に訪問し、ノートを開き綴ってある言葉に思わず涙ぐんだ。
そして、テーブルの上にはメモ用紙が貼ってあった。
キヌコさんへ
お礼の言葉はノートに書いたので。多分、後任者への引継ぎが始まれば、
この交換メモ用紙も出来なくなる。
なので、最後にキヌコさんとキヌコさんの作った料理を一緒に食べたいんだけど。
それで、もうそちらの会社には連絡してる。一日だけ時間変更と延長してほしいんだ。
時間は、午後五時から午後九時まで。食べたいものはご飯、豚汁、だし巻き卵、焼き鮭、宜しくお願いします。
日程は引継ぎが始まる前日、メモ用紙を貼ることが出来る期日までかな……。
では、宜しくお願いします。
追伸、会社には模様替えに伴う大掃除って言ってあるからね。悠
仕事を終え、悠が帰宅するとテーブルの上には、唯からのメモが貼られていた。
悠さんへ
了解しました。他にも作れるのですがね。まぁ、希望ですから……。キヌコ
唯こと、キヌコさんが後任者へ引継ぎを行う前日がやって来た。
夕方、唯は悠の部屋に着くと調理を始めた。
午後七時、悠が帰宅した。
「キヌコさん、久しぶり」
「そうですね。ごはん、出来てますよ」キヌコさんこと唯が微笑んだ。
「うぁ~美味しそう。俺着替えてくる」と言うと悠は寝室へ入って行った。
着替えを済ませ椅子に座った悠、目の前にはキヌコ仕様の唯が座る。
「いただきます」と手を合わせると二人は楽しそうの食事を初めた。
「俺、キヌコさんの正体初めて知った時、かなりの衝撃だったんだ」
「私も、まさか悠さんが帰宅してくるなんて思っていなかったから。
それに、まさか、まさかの『RAIN』の悠だったなんて私本当に驚きました」
「キヌコさんと出会って本当に楽しかった。
別に会ってたわけじゃないんだけどさ、なんか言葉で繋がってるんじゃないかってずっと思ってた」
「私もです。色んなことが起きたけど楽しかった。
悠さんに出会わなかったら私の人生、普通で終わったのかもしれない。
でも、これからは未知の世界へ飛び込む心境……」
「そうか。キヌコさんの目、生き生きしてるよ」と悠が優しい眼差しで言った。
「ありがとうございます」
彼女の言葉を聞いた悠が、リビングの棚の引き出しから袋を取り出すと唯に渡した。
「キヌコさんこれ……」
「これは?」
「今までのお礼かな? 開けて見て」
唯が包みを開けると、
「わぁ~凄い……」と呟いた。
悠の顔を見る唯。
「これは、台本カバー」と悠が言った。
「台本カバー?」唯が聞いた。
「そう、キヌコさんがいつか台本をもらって仕事出来るようになった時に使ってほしいから……」
悠の言葉を聞いた唯。
「ありがとうございます。大切にします。そして、必ずこの台本カバーを使えるような女優になります」
と言うと台本カバーを胸に握りしめた。
嬉しそうに台本カバーを見つめる唯、
「ん? 悠さんこれは?」何かに気づいた唯が悠に聞いた。
「あ~これは、キヌコさんが名前。教えてくれないから
ネームの所に彫ってもらったんだ」
ネームケースの隅に小さく彫られている名前は『KINUKO』と記してあった。
唯はクスっと笑うと、
「本当にありがとうございました」と言った。
午後九時近くになると唯が言った。
「そろそろ、失礼します……」
と言うと、唯がわたあめのような
フワフワのアフロもどきのウイッグを頭に装着した。
それを見た悠は「別に、そのままでいいんじゃないの?
地下までの直通EVに乗ればカードキーは俺が返却しておくよ」
と言ったが唯は、
「いいえ、今夜は仕事ですのでキヌコさんとして帰ります。では」
と言うと、キヌコさんは玄関を出て行った。
玄関に一人立つ悠の姿は、とても寂しそうな表情を浮かべた。