大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
序章 死神の住む街
「聞いたかい? また死神に嫁さんが来るんだって?」
「そうらしいよ。ついこの間、たいそうな葬式あげてたってぇのに、もう次の嫁だとよ」
「これで何人目だい?」
「さあね。数えきれねぇよ。だいたい、死神って言ったって、どこの誰かもわかんねぇんだからさ」
「どうせまたすぐに、死んじまうんだろうね。可哀想に」
ハンチング帽を被った男性たちの、面白おかしく笑う声が響いている。
平岡 志乃は手に持っていた巾着袋をぎゅっと握り直すと、足早にその横を通り過ぎた。
下駄で小石を蹴るように走り、通りの角を曲がった所でやっと息をつく。
そうっと振り返り角から顔を覗かせると、さっきまで話をしていた人たちは、もうどこかへ行ってしまったようだった。
「もう、噂が広まってるんだ……」
志乃は駆け足になった鼓動をしずめる様に、着物の胸元をぐっと押さえる。
そして一度ゆっくりと息を吐くと、顔を上げ再び足を進めた。
「そうらしいよ。ついこの間、たいそうな葬式あげてたってぇのに、もう次の嫁だとよ」
「これで何人目だい?」
「さあね。数えきれねぇよ。だいたい、死神って言ったって、どこの誰かもわかんねぇんだからさ」
「どうせまたすぐに、死んじまうんだろうね。可哀想に」
ハンチング帽を被った男性たちの、面白おかしく笑う声が響いている。
平岡 志乃は手に持っていた巾着袋をぎゅっと握り直すと、足早にその横を通り過ぎた。
下駄で小石を蹴るように走り、通りの角を曲がった所でやっと息をつく。
そうっと振り返り角から顔を覗かせると、さっきまで話をしていた人たちは、もうどこかへ行ってしまったようだった。
「もう、噂が広まってるんだ……」
志乃は駆け足になった鼓動をしずめる様に、着物の胸元をぐっと押さえる。
そして一度ゆっくりと息を吐くと、顔を上げ再び足を進めた。
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