大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「旦那様」
思わず声を出した志乃に、花奏がゆっくりと瞳を向けた。
「いつからか、俺は自分の死のために祈っているような気がしてならんのだ……」
「そんな……」
「志乃、やはり俺は死神なのかも知れん」
あまりに儚く、消えてしまいそうな花奏の言葉に、志乃はひどく傷ついたような顔を上げる。
それではまるで、花奏が死を望んでいるように聞こえるではないか……。
志乃は顔を上げると、花奏の腕に手をかけた。
「嫌です!」
「志乃?」
花奏は驚いたように目を丸くしている。
「私は嫌です。旦那様は必要だから生きているのです。そんな言い方は、私は嫌です」
志乃は手をかけた花奏の腕を、力を込めてぎゅっと握り締めた。
「私の母は回復したではありませんか。私とて、ここで生きています。病で死んでいった者たちは、旦那様の優しいお心に包まれて、この世に安心して別れを告げたのです。そんな旦那様が、死神であるはずがない……」
志乃は言葉をつまらせると、花奏の腕に顔をうずめ「わぁ」と声をあげて泣く。
「志乃……」
ロウソクの光は、そんな二人を温かくゆらゆらと照らし続けた。
思わず声を出した志乃に、花奏がゆっくりと瞳を向けた。
「いつからか、俺は自分の死のために祈っているような気がしてならんのだ……」
「そんな……」
「志乃、やはり俺は死神なのかも知れん」
あまりに儚く、消えてしまいそうな花奏の言葉に、志乃はひどく傷ついたような顔を上げる。
それではまるで、花奏が死を望んでいるように聞こえるではないか……。
志乃は顔を上げると、花奏の腕に手をかけた。
「嫌です!」
「志乃?」
花奏は驚いたように目を丸くしている。
「私は嫌です。旦那様は必要だから生きているのです。そんな言い方は、私は嫌です」
志乃は手をかけた花奏の腕を、力を込めてぎゅっと握り締めた。
「私の母は回復したではありませんか。私とて、ここで生きています。病で死んでいった者たちは、旦那様の優しいお心に包まれて、この世に安心して別れを告げたのです。そんな旦那様が、死神であるはずがない……」
志乃は言葉をつまらせると、花奏の腕に顔をうずめ「わぁ」と声をあげて泣く。
「志乃……」
ロウソクの光は、そんな二人を温かくゆらゆらと照らし続けた。