大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「でももう、志乃には話した方が良さそうだな。なぜ俺が、身寄りのない者をこの家に迎え入れるようになったかを……」

 花奏は深く息をつくと、先ほどの位牌に目を向けた。

 今まで気がつかなかったが、戒名に“香”の文字が入っているその位牌だけ、周りと造りが違うように感じる。

 すると花奏が静かに息を吸った。


「これは、妹の位牌だ……」

「え……? 妹……様?」

「そう、たった一人、療養所で死んでいった妹のものなのだ……」

 花奏はそう言うと、ひどく苦しそうに顔を歪め、眉間に手を当てる。

「どういうこと……ですか?」

 志乃は呆然とその場に立ち尽くしてしまった。


 花奏の妹が、一人で亡くなったとは、どういうことだろう?

 療養所ということは、妹も肺を患っていたということか。

 戸惑う志乃に、花奏は息をつくと、小さくほほ笑む。


「志乃には、すべてを話そう」

 花奏は自分を納得させるようにそううなずくと、志乃を畳に座らせ、自分も隣に腰かける。

 そして過去を手繰り寄せるように、ひとつひとつゆっくりと口を開いていった。
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