大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
死神の過去
花奏の妹の香織は、街でも有名な美しい娘だったそうだ。
箏の才があり、その腕前は遠く西国にまで届くほどで、縁談話もひっきりなしに持ちかけられたらしい。
そんなある日、西で大きな商店を営む家から見合い話が舞い込んだ。
相手は花奏の仕事に目をつけ、縁談と共に多額の融資も申し出たのだそうだ。
「その頃の俺は、亡き父親の家業を継いだばかりで、慣れない仕事に四苦八苦していた。貿易商といっても様々で、資金も信頼もない俺は、継いだ会社を存続させることだけで精一杯だった。そんな折の見合い話、こちらが浮足立つのも無理はない……」
花奏はそう言うと、深く息を吐く。
香織は初め、見合い話に乗り気ではなかったという。
それでも兄の苦労を知る香織は、少しでも助けになるならばと、しばらくして見合いを受けると言い出した。
話はトントン拍子に進み、程なくして香織は嫁いでいった。
「相手はいたく香織を気に入り、斎宮司家からの大切な嫁だと迎え入れられた。でも現実は、俺が知るものとは程遠いものだった……」
花奏の声に、志乃ははっと息をのむ。
箏の才があり、その腕前は遠く西国にまで届くほどで、縁談話もひっきりなしに持ちかけられたらしい。
そんなある日、西で大きな商店を営む家から見合い話が舞い込んだ。
相手は花奏の仕事に目をつけ、縁談と共に多額の融資も申し出たのだそうだ。
「その頃の俺は、亡き父親の家業を継いだばかりで、慣れない仕事に四苦八苦していた。貿易商といっても様々で、資金も信頼もない俺は、継いだ会社を存続させることだけで精一杯だった。そんな折の見合い話、こちらが浮足立つのも無理はない……」
花奏はそう言うと、深く息を吐く。
香織は初め、見合い話に乗り気ではなかったという。
それでも兄の苦労を知る香織は、少しでも助けになるならばと、しばらくして見合いを受けると言い出した。
話はトントン拍子に進み、程なくして香織は嫁いでいった。
「相手はいたく香織を気に入り、斎宮司家からの大切な嫁だと迎え入れられた。でも現実は、俺が知るものとは程遠いものだった……」
花奏の声に、志乃ははっと息をのむ。