大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
事実、香織の嫁ぎ先からの、花奏への資金援助は膨大だったという。
それによって、花奏の事業が今のように安定したのは確かだ。
香織の想いを考えると、胸が締め付けられるように苦しくてたまらない。
「そんなある日、嫁ぎ先から突然、香織の箏が届けられた。箏は香織の嫁入り道具として用意したもの。手紙も何もなく、ただ届けられた箏を不審に思った俺は、事実を知って愕然とした……」
志乃の母親と同じ、肺の病に侵された香織は、嫁ぎ先から離縁され、ただ一人療養所に入っていたのだ。
「そんな……」
小さく叫んだ志乃の頬を、涙が次から次へと零れていく。
「俺は五木と共に、すぐさま療養所に駆けつけた。でも時すでに遅し。香織は息を引き取った後だった……」
花奏は目を閉じると、そのまま天井を仰ぐ。
「俺は自分の愚かさを、心の底から呪った。妹の死の上に立ってまで、自分は何がしたかったのだろうかと……」
花奏の握り締めた拳が震えている。
「旦那様……」
志乃はたまらずに、その拳を両手で包み込んだ。
それによって、花奏の事業が今のように安定したのは確かだ。
香織の想いを考えると、胸が締め付けられるように苦しくてたまらない。
「そんなある日、嫁ぎ先から突然、香織の箏が届けられた。箏は香織の嫁入り道具として用意したもの。手紙も何もなく、ただ届けられた箏を不審に思った俺は、事実を知って愕然とした……」
志乃の母親と同じ、肺の病に侵された香織は、嫁ぎ先から離縁され、ただ一人療養所に入っていたのだ。
「そんな……」
小さく叫んだ志乃の頬を、涙が次から次へと零れていく。
「俺は五木と共に、すぐさま療養所に駆けつけた。でも時すでに遅し。香織は息を引き取った後だった……」
花奏は目を閉じると、そのまま天井を仰ぐ。
「俺は自分の愚かさを、心の底から呪った。妹の死の上に立ってまで、自分は何がしたかったのだろうかと……」
花奏の握り締めた拳が震えている。
「旦那様……」
志乃はたまらずに、その拳を両手で包み込んだ。