大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
志乃は庭先へ出ると、井戸水の入った桶でバシャバシャと勢いよく顔をすすぎ、ふるふると首を振った。
――もう私ったら、どうしたというの……。
花奏の顔を見た途端、全身が熱くて熱くてたまらなくなり、真っ赤になった顔は、まともに花奏の目を見ることもできなかったのだ。
小さくため息をついた志乃は、つい先ほど目の前で見た花奏の顔を思い出す。
――旦那様のお顔も声も、とても優しかった……。
花奏は、今まではどことなく志乃に、距離を置いていたような節があった。
それはきっと、志乃がいずれは実家に帰ると思っていたからだろう。
でもさっきの味噌汁の話もそうだが、昨夜花奏が言った「志乃の好きにしろ」という言葉通り、花奏は志乃がこの家に留まることを認めてくれたのだと思う。
「私、このままここに、いても良いのだわ」
志乃は顔を拭った手ぬぐいを、キュッと握り締めながら顔を上げる。
花奏を過去から救い出し、自分が守ると宣言したのだ。
「しっかりするのよ、志乃」
志乃は自分に気合を入れ直すと、朝餉の準備をするために、元気よく炊事場に駆け込んでいった。
――もう私ったら、どうしたというの……。
花奏の顔を見た途端、全身が熱くて熱くてたまらなくなり、真っ赤になった顔は、まともに花奏の目を見ることもできなかったのだ。
小さくため息をついた志乃は、つい先ほど目の前で見た花奏の顔を思い出す。
――旦那様のお顔も声も、とても優しかった……。
花奏は、今まではどことなく志乃に、距離を置いていたような節があった。
それはきっと、志乃がいずれは実家に帰ると思っていたからだろう。
でもさっきの味噌汁の話もそうだが、昨夜花奏が言った「志乃の好きにしろ」という言葉通り、花奏は志乃がこの家に留まることを認めてくれたのだと思う。
「私、このままここに、いても良いのだわ」
志乃は顔を拭った手ぬぐいを、キュッと握り締めながら顔を上げる。
花奏を過去から救い出し、自分が守ると宣言したのだ。
「しっかりするのよ、志乃」
志乃は自分に気合を入れ直すと、朝餉の準備をするために、元気よく炊事場に駆け込んでいった。