大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「花奏様と香織様は、五つ違いのご兄妹でございました。花奏様は、妹の香織様が生まれた時から、それはもう可愛がっておいでで。私が何か世話を焼こうとすると『五木は黙って見ておれ』と、度々叱られました程です」
五木が懐かしそうに目を細め、志乃はつられるようにくすりと肩を揺らす。
「香織様も兄である花奏様を、とても慕っておいでで、お二人は本当に仲の良いご兄妹でございました」
五木は口を閉じると、一旦手ぬぐいで目じりを押さえた。
「お二人のお母上、奥様はお身体が弱く、香織様を生んですぐに亡くなられました。それもあって花奏様は、子供心に母親代わりも、つとめようとしていたのでございましょう。香織様に愛情を注ぎ、忙しいお父上に変わって家を支えておいででした」
「そうだったのですね……」
志乃の瞼に、見たことのない、幼き日の花奏の姿が浮かぶ。
花奏のことだ、正義感が強く精悍な子どもだったのだろう。
「それから花奏様も香織様もご立派に成長なさいましたが、その頃、突然お父上である旦那様が亡くなられたのです」
五木の話に、志乃は小さく息をのむ。
五木が懐かしそうに目を細め、志乃はつられるようにくすりと肩を揺らす。
「香織様も兄である花奏様を、とても慕っておいでで、お二人は本当に仲の良いご兄妹でございました」
五木は口を閉じると、一旦手ぬぐいで目じりを押さえた。
「お二人のお母上、奥様はお身体が弱く、香織様を生んですぐに亡くなられました。それもあって花奏様は、子供心に母親代わりも、つとめようとしていたのでございましょう。香織様に愛情を注ぎ、忙しいお父上に変わって家を支えておいででした」
「そうだったのですね……」
志乃の瞼に、見たことのない、幼き日の花奏の姿が浮かぶ。
花奏のことだ、正義感が強く精悍な子どもだったのだろう。
「それから花奏様も香織様もご立派に成長なさいましたが、その頃、突然お父上である旦那様が亡くなられたのです」
五木の話に、志乃は小さく息をのむ。