大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「そ、そういえば……初めて旦那様にお会いした時に『お前はとにかく危なっかしい』と、旦那様がおっしゃいました」

 渋い顔をする志乃に、五木は再びフォッフォッと笑う。

 その声につられて、志乃もついくすくすと笑いだしてしまった。


「そんなことがあったからこそ、昨晩の志乃様のお言葉は、五木の心に深く残ったのでございます。本当に志乃様は、大切な斎宮司家の奥方様にございますよ」

 五木の言葉に、志乃は「奥方様だなんて!」と小さく叫んでしまう。

「どうされました?」

 五木は不思議そうな顔をしている。

「だって……まだ私は、旦那様に“妻”として、認めていただけていないと思うのです……」

「そうでしょうか?」

「きっと、そうです。でも……」

 志乃は静かに目を閉じると、息を吸って顔を上げる。


「いつか旦那様に、笑顔が戻った時……。その時は、旦那様の本当の“妻”になりたいと願っています」

 志乃の硬い決意に、五木はにっこりとほほ笑む。

「志乃様の今のお言葉を、そのまま旦那様にお聞かせしたいものですな」

「えっ……」

 志乃は軽く叫び声を上げると、真っ赤になった頬を両手で覆った。

 すると五木が志乃をそっと手招きする。
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