大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
花奏は、そんな志乃に顔を覗き込ませると、愛おしそうに見つめた。
「俺は過去を忘れることに恐れを感じていた。でもそれは、間違いだったのかも知れん」
花奏のその言葉を聞いてから、志乃は自分らしく表現すればよいのだと自信を持った。
そうすることで、香織の思い出も含めて、花奏の心を癒していくことができる気がしたのだ。
「こんにちは」
箏を弾き終えた志乃が、横になる花奏に羽織をそっとかけていた時、入り口の戸の方から誰かの声が聞こえた。
首を傾げた志乃は、花奏を起こさないように、そっと立ち上がると入り口の障子を開く。
そこに笑顔で立っていたのは田所だった。
「まぁ、田所先生」
田所に会うのは、母の回復の知らせを聞いた時以来だ。
珍しい田所の来訪に、志乃は思わず驚いた声をあげてから、慌てて自分の口を両手でふさぐ。
不思議そうな顔をする田所に、志乃はしーっと口元に指を当てた。
志乃は座敷の奥を振り返りながら、そっと花奏の様子を伺うが、花奏は横になったまま動かなかった。
「俺は過去を忘れることに恐れを感じていた。でもそれは、間違いだったのかも知れん」
花奏のその言葉を聞いてから、志乃は自分らしく表現すればよいのだと自信を持った。
そうすることで、香織の思い出も含めて、花奏の心を癒していくことができる気がしたのだ。
「こんにちは」
箏を弾き終えた志乃が、横になる花奏に羽織をそっとかけていた時、入り口の戸の方から誰かの声が聞こえた。
首を傾げた志乃は、花奏を起こさないように、そっと立ち上がると入り口の障子を開く。
そこに笑顔で立っていたのは田所だった。
「まぁ、田所先生」
田所に会うのは、母の回復の知らせを聞いた時以来だ。
珍しい田所の来訪に、志乃は思わず驚いた声をあげてから、慌てて自分の口を両手でふさぐ。
不思議そうな顔をする田所に、志乃はしーっと口元に指を当てた。
志乃は座敷の奥を振り返りながら、そっと花奏の様子を伺うが、花奏は横になったまま動かなかった。