大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「今度の社交界には志乃ちゃんも行くんだろう? 今回は軍の関係者だけでなく、様々な人が招待されていると聞くし、うちのも連れて行くつもりなんだ。その時に挨拶でも……」

「社交界……?」

 田所の話を聞きながら、志乃は目をパチクリとさせてしまう。

 社交界とは何だろう?

 全く縁もないような世界の話に、志乃の頭は戸惑うばかりだ。


 するとそんな志乃の隣で、花奏が大きくため息をついた。

 ふと隣を見上げると、花奏は田所を軽く睨みつけている。

「田所、お前は、すぐ余計なことを言うのだ。志乃には荷が重いゆえ、黙っていたというのに……」

 花奏はむすっとした声を出すが、それにも臆せず、田所は目を丸くさせた。


「え? そうなのかい? 何を言っているんだよ。志乃ちゃんなら大丈夫さ。ねぇ、そうだろう?」

 田所は自信満々にそう言うと、志乃にぐっと顔を覗き込ませる。

 田所のあまりの勢いに、志乃はつい、つられる様に「は、はい」と答えてしまった。

「ほうら聞いたかい? 花奏、社交界には、必ず《《妻である》》志乃ちゃんと一緒に、来てくれよな」
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