大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
その日の晩、片づけを済ませた志乃は、いつものように五木に先に休むと声をかけると、暗い廊下を進み自分の部屋へと向かった。
ギシギシと音の鳴る廊下を歩きながら、ふと先ほどまでの花奏の様子を思い出す。
田所が帰った後、離れから戻った花奏は、いつもと変わらぬ顔つきをしていた。
静かに食事をとり、穏やかな声で五木と会話をし、脇に湯飲みを置く志乃に、優しくほほ笑んでくれた。
でもその後は、まだ仕事が残っているからと言って、早めに自分の部屋にこもってしまった。
今までにも、そういう日は度々あったはずだ。
でも今の志乃には、その様子ですら、花奏が再び過去に閉じこもってしまうような気がして、不安でたまらなかった。
そして花奏の長い髪が揺れる度、志乃は酷く心をえぐられたような気持ちになって苦しくなるのだ。
志乃はふと、田所の話を思い出す。
“懺悔の証”
田所は、花奏の髪のことをそう言った。
自分は幸せになってはならぬと戒めるものに、花奏の髪はなってしまったのだと。
ギシギシと音の鳴る廊下を歩きながら、ふと先ほどまでの花奏の様子を思い出す。
田所が帰った後、離れから戻った花奏は、いつもと変わらぬ顔つきをしていた。
静かに食事をとり、穏やかな声で五木と会話をし、脇に湯飲みを置く志乃に、優しくほほ笑んでくれた。
でもその後は、まだ仕事が残っているからと言って、早めに自分の部屋にこもってしまった。
今までにも、そういう日は度々あったはずだ。
でも今の志乃には、その様子ですら、花奏が再び過去に閉じこもってしまうような気がして、不安でたまらなかった。
そして花奏の長い髪が揺れる度、志乃は酷く心をえぐられたような気持ちになって苦しくなるのだ。
志乃はふと、田所の話を思い出す。
“懺悔の証”
田所は、花奏の髪のことをそう言った。
自分は幸せになってはならぬと戒めるものに、花奏の髪はなってしまったのだと。