大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
段になり大きくフレアに広がる裾は、互い違いに細かい花柄の刺繍を施したサテン生地が覗いていた。
「こんなに素敵なドレスを私に? 良いのでしょうか……」
驚いて目を丸くする志乃に、五木は「旦那様がご用意なされました」と、にっこりとほほ笑んだのだ。
「ほらほら志乃様。顎を引いてしゃんとなさい。淑女たるもの姿勢を正して、にこやかに旦那様の後ろに控えておいででなければなりませぬ」
志乃は、先ほどから耳にタコができそうなほど何度も聞いた、五木の言葉に渋い顔をする。
「どうかなさいましたかな? 顔が真っ青ですぞ」
「い、息が苦しいのです……」
志乃は恨めしそうに、上目遣いで五木を見た。
志乃の着替えを手伝った女性は、もう帰っている。
五木は小さくため息をつくと、志乃の後ろに回り、少しだけリボンの結びを緩めてくれた。
「志乃様。今回ご招待を受けるのは、旦那様も大変お世話になっておられる方なのです。とにかく失礼のないように!」
五木がもう一度怖い顔を覗き込ませ、志乃が「ひっ」と悲鳴を上げたとき、ギシギシと廊下を歩く音が聞こえる。
「もう、それぐらいでよいだろう、五木」
すると開いた障子から、タキシード姿の花奏が顔を覗かせた。
「こんなに素敵なドレスを私に? 良いのでしょうか……」
驚いて目を丸くする志乃に、五木は「旦那様がご用意なされました」と、にっこりとほほ笑んだのだ。
「ほらほら志乃様。顎を引いてしゃんとなさい。淑女たるもの姿勢を正して、にこやかに旦那様の後ろに控えておいででなければなりませぬ」
志乃は、先ほどから耳にタコができそうなほど何度も聞いた、五木の言葉に渋い顔をする。
「どうかなさいましたかな? 顔が真っ青ですぞ」
「い、息が苦しいのです……」
志乃は恨めしそうに、上目遣いで五木を見た。
志乃の着替えを手伝った女性は、もう帰っている。
五木は小さくため息をつくと、志乃の後ろに回り、少しだけリボンの結びを緩めてくれた。
「志乃様。今回ご招待を受けるのは、旦那様も大変お世話になっておられる方なのです。とにかく失礼のないように!」
五木がもう一度怖い顔を覗き込ませ、志乃が「ひっ」と悲鳴を上げたとき、ギシギシと廊下を歩く音が聞こえる。
「もう、それぐらいでよいだろう、五木」
すると開いた障子から、タキシード姿の花奏が顔を覗かせた。