大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
 花奏の姿を見た途端、志乃はぽっと頬を赤らめる。

 普段から花奏のスーツ姿は見慣れているはずなのに、今日の花奏は一段と紳士然として凛々しく美しかった。


「だ、旦那様……あの、いかがでしょうか?」

 志乃は自分のドレス姿に恥ずかしさで下を向きながら、小さく声を出す。

 花奏は志乃に目をやると、しばらく驚いたように見つめていたが、はっとするとすぐに目を逸らした。


 ――まさか、旦那様のお気に召さなかったのでは……?


 何も言わない花奏に不安になり、そっと顔を上げた志乃は、花奏の横顔を見て目を丸くする。

 花奏の頬は、ほんのり色づいているように見えるのだ。

「……なかなか、良いではないか」

 花奏は小さくそう言うと、「先に出ておるぞ」と言い残して廊下を歩いて行ってしまった。


「五木さん……今旦那様は、お褒めくださったのですよね……?」

 喜びで瞳を輝かせる志乃に、五木はフォッフォッと満面の笑みを見せる。

「はい。そうでございますよ。自信をもって行ってらっしゃいませ」

 五木の声に大きく返事をすると、志乃はドレスと同じ生地で出来た帽子をキュッと頭にのせ、花奏の待つ表へと向かって駆けだした。
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