大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「志乃、行くぞ」
花奏が低い声を出しながら、自分の腕を差し出す。
志乃は恥じらいながら、そっと花奏の腕に手をかけた。
歩くときはそうするのが西欧風の様式だと、五木から事前に厳しく言われていたのだ。
志乃はドキドキと鼓動を速めながら、細かい細工が施された石造りの階段を上る。
時折、慣れないドレスに裾を踏みそうになると、花奏が足を止めて声をかけてくれた。
――やはり、旦那様はお優しい……。
志乃の体温はどんどんと上昇していき、花奏の腕にかけた自分の手がひどく熱い。
すると、のぼせる様に足を進める志乃の前で、同じように男性に手を引かれて歩く婦人が目に入った。
山吹色のドレスを着こなし、ほほ笑みをたたえながら歩く婦人は気品に満ちており、控えめでありながらも優雅で大人の艶やかさを周囲に放っている。
志乃は思わず婦人に見惚れてしまった自分に気がつき、慌てて目を逸らした。
あの婦人に比べたら、なんと自分の幼いことか。
花奏はきっと今までも、あのように成熟した美しい貴婦人を、何人も見てきたのだろう。
花奏が低い声を出しながら、自分の腕を差し出す。
志乃は恥じらいながら、そっと花奏の腕に手をかけた。
歩くときはそうするのが西欧風の様式だと、五木から事前に厳しく言われていたのだ。
志乃はドキドキと鼓動を速めながら、細かい細工が施された石造りの階段を上る。
時折、慣れないドレスに裾を踏みそうになると、花奏が足を止めて声をかけてくれた。
――やはり、旦那様はお優しい……。
志乃の体温はどんどんと上昇していき、花奏の腕にかけた自分の手がひどく熱い。
すると、のぼせる様に足を進める志乃の前で、同じように男性に手を引かれて歩く婦人が目に入った。
山吹色のドレスを着こなし、ほほ笑みをたたえながら歩く婦人は気品に満ちており、控えめでありながらも優雅で大人の艶やかさを周囲に放っている。
志乃は思わず婦人に見惚れてしまった自分に気がつき、慌てて目を逸らした。
あの婦人に比べたら、なんと自分の幼いことか。
花奏はきっと今までも、あのように成熟した美しい貴婦人を、何人も見てきたのだろう。