大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
風がはこんだ音色
「お母さんったら、どうしたのかしら?」
次の日、志乃は妹たちを小学校へやると、その足でお師匠様の元を訪ねた。
お師匠様のお屋敷は高台にあり、そこへ続く坂道を上った開けた場所からは、港と大きな海が一望できる。
志乃は潮風に着物の袖を揺らしながら、レンガ造りの塀が続く通りを進み、ゆっくりと緩やかな石段を上って行った。
しばらくすると、ボーっという汽笛が響き渡り、ふと振り返ると港に大きな軍艦が一隻停泊しているのが見える。
その近くでは白いセーラー服に身を包んだ水兵さんが、列をなして行進していた。
志乃はしばらくその様子を眺めた後、再び足を運びだす。
今日は母に言われて、持っている中で一番華やかな、銘仙の着物を着てきた。
なぜ母が頑なにそう言ったのかはわからなかったが、志乃も赤や黄の華やかな着物の柄に、久々に心が晴れやかになった気分になる。
時折、軍楽隊が奏でる軽快な行進曲が、風にのって耳元に届き、志乃はそのマーチに合わせるように階段を上りきった。
すると石段の最上段で、ふうと息を整えた志乃は、お屋敷の前を見て目を丸くする。
次の日、志乃は妹たちを小学校へやると、その足でお師匠様の元を訪ねた。
お師匠様のお屋敷は高台にあり、そこへ続く坂道を上った開けた場所からは、港と大きな海が一望できる。
志乃は潮風に着物の袖を揺らしながら、レンガ造りの塀が続く通りを進み、ゆっくりと緩やかな石段を上って行った。
しばらくすると、ボーっという汽笛が響き渡り、ふと振り返ると港に大きな軍艦が一隻停泊しているのが見える。
その近くでは白いセーラー服に身を包んだ水兵さんが、列をなして行進していた。
志乃はしばらくその様子を眺めた後、再び足を運びだす。
今日は母に言われて、持っている中で一番華やかな、銘仙の着物を着てきた。
なぜ母が頑なにそう言ったのかはわからなかったが、志乃も赤や黄の華やかな着物の柄に、久々に心が晴れやかになった気分になる。
時折、軍楽隊が奏でる軽快な行進曲が、風にのって耳元に届き、志乃はそのマーチに合わせるように階段を上りきった。
すると石段の最上段で、ふうと息を整えた志乃は、お屋敷の前を見て目を丸くする。