大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
 エドワードとは、一体誰のことだろう?


 ――外国の方のお名前よね?


 するとその時、志乃の耳に聞き慣れない言葉が飛び込んできた。


「カナデ!」

 大きな声に振りかえると、手を広げた大柄の男性が、こちらに寄ってくるのが見える。

 男性は花奏の前に来ると、突然花奏の背に手を回し、がっちりと抱きしめた。

 志乃はその西欧風な挨拶に、ドキリとして目を丸くてしまう。


「エドワード」

 すると花奏も珍しく大きな声を出し、男性の挨拶に応えている。


 ――旦那様が、あんなお顔をされるなんて。ご友人様なのかしら?


 志乃は、普段は表情を出さない花奏の、あまりにくだけた様子に驚くと、外国語で会話をしている二人をしばし見つめていた。

 エドワードと呼ばれた男性は、背は花奏よりも高く、髪は柔らかな黄金色をしている。

 そして先を見据えるような青い瞳に、力強さを感じた。


 するとしばらくして、花奏と一通り話し終えたのか、エドワードが急にチラリとこちらを見たので、志乃はばっちりと目が合ってしまった。

「オォ、アナタガ、シノデスネ。トテモ、ウツクシイデス」

 突然のエドワードの言葉に、志乃は思わず「ひゃっ」と飛び上がってしまう。
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