大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
 このメロディは、以前にも聴いたことがあるような気がする。

 すると懸命に記憶を辿っていた志乃の横で、エドワードが「オォ」と歓声を上げた。


「ワタシノ、フルサトノキョク」

 エドワードはそう言うと、再び静かに目を閉じて演奏に耳を澄ます。

 切なくも美しい旋律にもう一度耳を傾けていた志乃は、しばらく聴き入った後「あっ」と声を上げた。

 この曲は、軍楽隊の演奏会で聞いた曲だと思い出したのだ。

 あの時、曲名を聞いた志乃に、五木は“外国の民謡”と言っていた。


「旦那様。私、この曲を知っています。軍楽隊の演奏会で初めて聴いて、とても懐かしい感じがする曲だったので、良く覚えているのです」

 志乃が花奏を見上げて弾んだ声を出すと、花奏は隣にいるエドワードに、志乃の言葉を伝える。

 その途端、エドワードが感動したように大きくうなずいた。


「これはエドワードの故郷にある、ローモンド湖という湖を唄った曲なのだ」

 花奏が志乃に説明してくれる。

「まぁ、湖を?」

 志乃は見たこともない湖に思いを馳せる様に、うっとりと声を出した。
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