大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
 女の子はまるで雑誌で見たバレリーナのように、白くてひらひらと舞うレースのついたドレスを着ている。

 年の頃は、下の妹の藤と同じくらいか、少し上といったところだろうか?

 あまりの愛らしさに、志乃がついほほ笑みながら女の子を目で追っていると、女の子は絨毯に足を取られたのか、志乃の目の前で盛大に転んでしまった。

 両手を広げるように絨毯に突っ伏した女の子は、途端に「わぁっ」と大声をあげて泣き出す。

 志乃は慌てて立ち上がると、女の子の側へと駆け寄った。


「痛かったねぇ。よしよし、お姉ちゃんに見せてごらん」

 志乃は泣きじゃくる女の子をゆっくりと立ち上がらせると、擦りむいたであろう膝や手をじっくりと覗き込む。

 幸い血は出ておらず、怪我の程度は軽そうだ。

 踏み心地の良い厚手の絨毯に助けられたのだろう。


「もう大丈夫。さぁ涙を拭いてあげるから、おいで」

 志乃は女の子をぎゅっと抱き寄せると、持っていたハンケチで涙を拭い、女の子の膝や手を優しく撫でた。
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