大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
昔は華や藤が泣いた時には、こうしてなだめていたなと懐かしく思っていると、しばらくヒクヒクと肩を震わせていた女の子に笑顔が戻ってくる。
「お姉さま、ありがとう存じます」
女の子はもじもじとしながらも、立派にお礼を言うと、ぴょこんと頭を下げた。
やはり社交界に呼ばれるような方の、ご息女だからだろうか。
こんなに幼いのに、気品と育ちの良さが伝わってくる。
志乃が感心したように見ていると、突然女の子が「爪!」と言って慌てだした。
「え? 爪?」
志乃が大きく首を傾げていると、女の子は周囲をきょろきょろと見渡した後、廊下に落ちていた小箱を見つけて走って行く。
どうも転んだ拍子に、手に持っていた小箱を飛ばしてしまっていたようだ。
「あ、あの、爪が壊れてしまったのです。お父さまに、お客さまの前で箏を弾くよう言われているのに……」
女の子は駆けて戻ってくるなり、志乃に訴えるように小箱を広げて見せた。
「お姉さま、ありがとう存じます」
女の子はもじもじとしながらも、立派にお礼を言うと、ぴょこんと頭を下げた。
やはり社交界に呼ばれるような方の、ご息女だからだろうか。
こんなに幼いのに、気品と育ちの良さが伝わってくる。
志乃が感心したように見ていると、突然女の子が「爪!」と言って慌てだした。
「え? 爪?」
志乃が大きく首を傾げていると、女の子は周囲をきょろきょろと見渡した後、廊下に落ちていた小箱を見つけて走って行く。
どうも転んだ拍子に、手に持っていた小箱を飛ばしてしまっていたようだ。
「あ、あの、爪が壊れてしまったのです。お父さまに、お客さまの前で箏を弾くよう言われているのに……」
女の子は駆けて戻ってくるなり、志乃に訴えるように小箱を広げて見せた。