大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「私とですか?」

 驚く志乃に、谷崎はこくりとうなずいた。

「えぇ。もう一度確認したかったのです。あなたと斎宮司殿との関係を……」

「え……」

 谷崎の言葉に、志乃は目を見開くと、固まったように動けなくなる。

 谷崎はそんな志乃の瞳をまっすぐに見つめた。


「軍楽隊の演奏会の日、僕はあなたが斎宮司殿の奥様なのだと思いました。でもずっと、あの日のあなたの様子が、気になっていたのです」

 谷崎の声に志乃は小さく下を向く。

 谷崎が志乃と花奏の関係に違和感をもつのは当然だろう。

 それもそのはず、だってあの日、志乃は初めて死神の正体が斎宮司花奏だったと知ったのだから。

 谷崎はそのまま言葉を続ける。


「先程、父にも聞いたのですが、やはりまだわからないのです。あなたと斎宮司殿は、どういった関係なのでしょうか……? 奥様ではないのですか? そうなのであれば、僕は……」

 そこまで言った谷崎は、志乃の顔を見てはっと口をつぐむ。

 志乃の瞳はみるみる涙で満ちてきていたのだ。
< 176 / 273 >

この作品をシェア

pagetop