大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
花奏は重い扉を押し開けると、静かな廊下へと出て辺りを見渡した。
志乃が会場の外へ出てからしばらく経つが、こちらに戻った様子はない。
――てっきり椅子にでも腰かけて、休んでいると思ったが……。
志乃を心配した花奏は、もう一度左右を見渡していたが、廊下の奥の突き当りを見て、はっと息を止める。
そこには建物の外へ出る窓が用意されており、その先のバルコニーに佇む志乃の姿を見つけたのだ。
志乃は誰かとほほ笑み合いながら話をしている。
じっと目をこらした花奏は、その相手を見て小さく息をのんだ。
「谷崎殿……」
そうつぶやいた花奏は、自分が無意識に拳を握り締めていたことに気がつく。
花奏ははっとすると、バルコニーにくるりと背を向け再び会場の中へと戻った。
会場の中をまっすぐ進みながら、花奏は自分に言い聞かせる。
――こうなることは、わかっていたはずではないか。
あえて谷崎の父親に、志乃を妻ではなく“身内”だと紹介したのは、他でもない自分だ。
それなのに……。
この胸をえぐられたような息苦しさは何なのだろう。
「花奏?」
田所が不思議そうに花奏の顔を見ている。
花奏は何も答えずに、ただじっと真っ暗な夜に染められた窓の外に目を向け続けた。
志乃が会場の外へ出てからしばらく経つが、こちらに戻った様子はない。
――てっきり椅子にでも腰かけて、休んでいると思ったが……。
志乃を心配した花奏は、もう一度左右を見渡していたが、廊下の奥の突き当りを見て、はっと息を止める。
そこには建物の外へ出る窓が用意されており、その先のバルコニーに佇む志乃の姿を見つけたのだ。
志乃は誰かとほほ笑み合いながら話をしている。
じっと目をこらした花奏は、その相手を見て小さく息をのんだ。
「谷崎殿……」
そうつぶやいた花奏は、自分が無意識に拳を握り締めていたことに気がつく。
花奏ははっとすると、バルコニーにくるりと背を向け再び会場の中へと戻った。
会場の中をまっすぐ進みながら、花奏は自分に言い聞かせる。
――こうなることは、わかっていたはずではないか。
あえて谷崎の父親に、志乃を妻ではなく“身内”だと紹介したのは、他でもない自分だ。
それなのに……。
この胸をえぐられたような息苦しさは何なのだろう。
「花奏?」
田所が不思議そうに花奏の顔を見ている。
花奏は何も答えずに、ただじっと真っ暗な夜に染められた窓の外に目を向け続けた。