大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
お師匠様は手紙を受け取ると、その場ですぐに目を通しだした。
「そう……かしこまりました……」
お師匠様はそっと目頭を押さえると、母の手紙に応えるように小さく声を出す。
そしてにっこりとほほ笑んだあと、不思議そうな顔をする志乃を中へ招き入れた。
志乃は門をくぐった途端、再び小さく首を傾げる。
いつもお稽古で通っていた時とは、何か雰囲気が違うのだ。
「今日はね、とてもお天気が良いでしょう? ですから障子をすべて取り払ったのです」
「え? 障子を?」
志乃が見ると、大きな庭に面した座敷は開け放たれ、奥まで見渡せるようになっている。
その真ん中に、お師匠様が大切にしている箏が置かれていた。
「今日は、あの箏でお稽古しましょう」
「ですが、あれはお師匠様の大切な箏。私は練習用のものを使わせていただきます」
志乃が滅相もないと首を振ると、お師匠様はそれを制するように志乃の顔を覗き込む。
「志乃さん、あれをお使いなさい。調弦は済ませてありますからね」
お師匠様の妙に威厳のある顔つきに、志乃は圧されるように小さくうなずくと、支度を整えて座敷へと向かった。
「そう……かしこまりました……」
お師匠様はそっと目頭を押さえると、母の手紙に応えるように小さく声を出す。
そしてにっこりとほほ笑んだあと、不思議そうな顔をする志乃を中へ招き入れた。
志乃は門をくぐった途端、再び小さく首を傾げる。
いつもお稽古で通っていた時とは、何か雰囲気が違うのだ。
「今日はね、とてもお天気が良いでしょう? ですから障子をすべて取り払ったのです」
「え? 障子を?」
志乃が見ると、大きな庭に面した座敷は開け放たれ、奥まで見渡せるようになっている。
その真ん中に、お師匠様が大切にしている箏が置かれていた。
「今日は、あの箏でお稽古しましょう」
「ですが、あれはお師匠様の大切な箏。私は練習用のものを使わせていただきます」
志乃が滅相もないと首を振ると、お師匠様はそれを制するように志乃の顔を覗き込む。
「志乃さん、あれをお使いなさい。調弦は済ませてありますからね」
お師匠様の妙に威厳のある顔つきに、志乃は圧されるように小さくうなずくと、支度を整えて座敷へと向かった。