大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
花奏は部屋の障子を開け、しんしんと冷え込む廊下に出た。
ふと庭に面したガラス戸を覗き込むと、寒さでガラスは白く曇っている。
花奏は曇ったガラスを手で拭い、そっと庭先を覗き込んだ。
「降ってきたな……」
花奏は小さく声を出すと、灰色の空を見上げた。
空からは、チラチラとすぐに溶けてしまいそうな粉雪が舞いだしている。
今日は朝から分厚い雲が広がっていたが、ついに降りだしたようだ。
部屋に戻った花奏は、椅子に深く腰をかけると、静かに息を吐いた。
志乃は今頃、谷崎の屋敷で過ごしていることだろう。
綺麗に身なりを整えた志乃が、出がけに挨拶をしに来た時、花奏はいつもと変わらぬ態度で志乃を見送った。
「楽しんで来るといい」
花奏がそう言うと、志乃は「はい」とまるで花が咲いたかのように、嬉しそうに笑った。
その笑顔を見ているのが苦しくなった花奏は、仕事があるからと、すぐに部屋にこもってしまったのだ。
ふと庭に面したガラス戸を覗き込むと、寒さでガラスは白く曇っている。
花奏は曇ったガラスを手で拭い、そっと庭先を覗き込んだ。
「降ってきたな……」
花奏は小さく声を出すと、灰色の空を見上げた。
空からは、チラチラとすぐに溶けてしまいそうな粉雪が舞いだしている。
今日は朝から分厚い雲が広がっていたが、ついに降りだしたようだ。
部屋に戻った花奏は、椅子に深く腰をかけると、静かに息を吐いた。
志乃は今頃、谷崎の屋敷で過ごしていることだろう。
綺麗に身なりを整えた志乃が、出がけに挨拶をしに来た時、花奏はいつもと変わらぬ態度で志乃を見送った。
「楽しんで来るといい」
花奏がそう言うと、志乃は「はい」とまるで花が咲いたかのように、嬉しそうに笑った。
その笑顔を見ているのが苦しくなった花奏は、仕事があるからと、すぐに部屋にこもってしまったのだ。