大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
静かな時間が流れ、辺りは次第に薄暗くなりだしている。
花奏は五木の身体を支えるように起こすと、花奏の腕を掴んでいる手をそっと離した。
「五木、言うとおりにしろ」
花奏の低く苦しげな声が響き、五木ははっと顔を上げる。
そのまま五木は「うっ」と涙に声をつまらせると、丸い背中を一層丸めて、静かに花奏の部屋を後にした。
どれほど時間が経ったのだろう。
明かりもつけずに部屋に立ち尽くしていた花奏は、あたりが真っ暗になっていることに気がついた。
廊下に出ると屋敷の中は、物音ひとつせず、暗く静まり返っている。
普段ならばこの時分には、炊事場から味噌汁や焼き魚の香ばしい匂いに混じって、志乃と五木の楽しそうな声が聞こえてくる頃だろう。
しかし今日は、この屋敷自体が死んでしまったように、何の気配も感じさせなかった。
花奏は、先ほど覗いたガラス戸に手をかける。
あれから降り続いた雪は庭の草木を一面覆い、まるで眠りについたかのように、すべての音を飲み込んでいた。
花奏は五木の身体を支えるように起こすと、花奏の腕を掴んでいる手をそっと離した。
「五木、言うとおりにしろ」
花奏の低く苦しげな声が響き、五木ははっと顔を上げる。
そのまま五木は「うっ」と涙に声をつまらせると、丸い背中を一層丸めて、静かに花奏の部屋を後にした。
どれほど時間が経ったのだろう。
明かりもつけずに部屋に立ち尽くしていた花奏は、あたりが真っ暗になっていることに気がついた。
廊下に出ると屋敷の中は、物音ひとつせず、暗く静まり返っている。
普段ならばこの時分には、炊事場から味噌汁や焼き魚の香ばしい匂いに混じって、志乃と五木の楽しそうな声が聞こえてくる頃だろう。
しかし今日は、この屋敷自体が死んでしまったように、何の気配も感じさせなかった。
花奏は、先ほど覗いたガラス戸に手をかける。
あれから降り続いた雪は庭の草木を一面覆い、まるで眠りについたかのように、すべての音を飲み込んでいた。