大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
突然の訪問
「孝太郎坊ちゃん」
使用人が遠慮がちに、谷崎に声をかける。
谷崎は、楽しそうにほほ笑む志乃と唯子を見ながら、そっと部屋を後にした。
「お取込み中、申し訳ございません。今しがた玄関に、斎宮司殿と言われる方がおいでなのですが……」
使用人の声に、谷崎ははっと顔を上げる。
「斎宮司殿が?」
「はい。それが、この雪の中を走って来られたのか、酷く濡れておいでで。外套や羽織もなく、本当にあの斎宮司殿なのか、私共もはかりかねるのでございます」
困惑したような使用人の声に、谷崎は驚いたように目を丸くした。
斎宮司の屋敷からここまでは、かなりの距離がある。
雪の降り積もる中を、走って来るなど、普通では考えられないことだ。
谷崎はしばし呆然とした後、ぷっと吹き出した。
「坊ちゃん?」
使用人は、あははと笑い声をあげる谷崎に、不思議そうに首を傾げている。
「いや、すまん。まさか、あの斎宮司殿が、走って姫を迎えに来るとは、正直僕も想像もしていなかったものでね」
谷崎は、再び笑い声を上げると、「すぐに行く」と使用人に伝えた。
使用人が遠慮がちに、谷崎に声をかける。
谷崎は、楽しそうにほほ笑む志乃と唯子を見ながら、そっと部屋を後にした。
「お取込み中、申し訳ございません。今しがた玄関に、斎宮司殿と言われる方がおいでなのですが……」
使用人の声に、谷崎ははっと顔を上げる。
「斎宮司殿が?」
「はい。それが、この雪の中を走って来られたのか、酷く濡れておいでで。外套や羽織もなく、本当にあの斎宮司殿なのか、私共もはかりかねるのでございます」
困惑したような使用人の声に、谷崎は驚いたように目を丸くした。
斎宮司の屋敷からここまでは、かなりの距離がある。
雪の降り積もる中を、走って来るなど、普通では考えられないことだ。
谷崎はしばし呆然とした後、ぷっと吹き出した。
「坊ちゃん?」
使用人は、あははと笑い声をあげる谷崎に、不思議そうに首を傾げている。
「いや、すまん。まさか、あの斎宮司殿が、走って姫を迎えに来るとは、正直僕も想像もしていなかったものでね」
谷崎は、再び笑い声を上げると、「すぐに行く」と使用人に伝えた。