大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「私を、ですか?」

「あぁ、そうだ。お前を迎えに来た」

 志乃は再び驚いたような顔をしていたが、途端に頬を真っ赤に染めると、恥ずかしそうに下を向いた。

「旦那様が迎えに来てくださるなど、私はなんて幸せ者なのでしょう……」

 恥じらいながら口を開く志乃を、花奏はそっと下から覗き込む。


「志乃、ともに屋敷に帰ろう」

 志乃は花奏の顔を見上げると、満面の笑みでほほ笑んだ。

「はい、旦那様」

 こくりと志乃が頷いた時、「お姉さま」という声が二階から聞こえる。

 見ると唯子が大きな箱を両手の手のひらに乗せて、そろそろと階段を下りてくるところだった。


「お姉さま、大切なものをお忘れですよ」

 唯子はそう言いながら階段を下りきると、慎重に手に持っていた箱を志乃に手渡す。

「まぁ、唯子ちゃん、今日は本当にありがとう」

 志乃は箱を受け取ると、大切そうに両手で抱えた。

「さぁ、そろそろ時間です。表に車を用意させましょう」

 すると谷崎が声を出しながら、玄関の扉を押し開ける。
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